【論風】進化する応急仮設住宅 トレーラーハウスを本格活用 (2/2ページ)

 この地の被災者は農家や酪農家が多く、従前の公有地に建つ仮設団地に生活の場を移すのは日常の農地や家畜の世話には適さず、現実的ではない。彼らの実情をふまえ、国は被災者戸別私有地に仮設住宅の設置を認めた。これも日本初の画期的な出来事である。10月10日夕方、長野を出発して新潟港でフェリーに乗ったトレーラーハウス2台が苫小牧港へ陸揚げされた。11日~12日に安平町でトレーラーハウス仮設住宅の内覧会が開催され、多くの被災者や安平町・厚真町の両町長は初めて見る実物のトレーハウスに驚きと感動の声をあげていた。北海道は積雪があるので、時間との勝負である。まさにトレーラーハウスがチカラを発揮するロケーションである。安平町長は夢を語ってくれた。「2年後に町がトレーラーハウスを買い取り、希望する被災者へ払い下げる。地方創生で“トレーラーハウスのまちづくり”に生かしたい」

 いま北海道では、トレーラーハウス仮設住宅の早期導入へ向けて粛々と準備が進んでいる。1992年米国ハリケーン・アンドリュー被災地調査で学んだトレーラーハウスの活用を提案してきた。4半世紀を経て熊本地震、そして西日本豪雨と北海道地震、この2年間で急速にトレーラーハウスは被災者支援の法制度の壁を乗り越えてきている。被災者の笑顔を増やすために。

                   

【プロフィル】渡辺実

 わたなべ・みのる 工学院大工卒。都市防災研究所を経て1989年まちづくり計画研究所設立、代表取締役所長。NPO法人日本災害情報サポートネットワーク顧問。技術士・防災士。66歳。東京都出身。