ローカリゼーションマップ

「日本にはまだ女子大があるのか!」…驚く欧州人 ルーツや存在意義を考える (3/3ページ)

安西洋之

 共学で男子がいたとして、女子のリーダーシップの力がより伸びるとは、さほど期待できるものでもない。

 「これが現実の社会だから、と(男子のリーダーシップを優先する状況を)納得させるのもなにか違いますよね」と松下さんは首をかしげる。

 そもそもの前提として、女子大というカテゴリーを俎上にのせて論じる時代でもなくなったとの意識が松下さんにはある。それぞれの立ち位置や地域・学部の特色などを踏まえて考えるべきことが多い、と彼は認識している。

 まず松下さん個人としては、非常勤で行っている立教大や中央大の学生と実践女子の学生を交えていろいろ活動しており、実践女子大の学生を孤立した存在として見ていない。

 二番目に彼が考えるのは、東京の都心部における大学の密度からすると、「渋谷大学」のなかにカレッジがいろいろあるとのイメージである。物理的な距離で言うなら、実践女子大学は渋谷にあり、青山学院大学や國學院大學と隣接しているのだ。

 三番目としては、渋谷という地域や企業と連携しながら問題解決型学習を展開するにあたり、「渋谷の女子大生」とのエクストリーム・ユーザーとしての強みがあると考えている。大規模大学の多様な人達という集団とは逆の強みを活かした、デザインや企画・提案を探っていくという方向性だ。

 「例えば、鹿児島の鰹節業者×渋谷の女子大生というように、コラボ・掛け算の要素としての個性という意味では、『渋谷』『女子大』というのは面白さがあるかなと思っています」

 冒頭のエピソードに戻す。松下さんが説明してくれた、これらの個別の事情を欧州の先生に話さないと、彼らはさっぱりとした顔をしないのだろうか。もし他のストーリーがあるとしたら、それはどういうものなのだろう。

 女子大、欧州大陸でなかなか手ごわいテーマである。

【プロフィール】安西洋之(あんざい・ひろゆき)

安西洋之(あんざい・ひろゆき)モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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