沖縄の食文化を尊び、地元生産者、料理人すべての想いを一皿にした「ぬちぐすい」 (3/4ページ)

「沖縄の味の濃い野菜、とりわけ苦みのある野菜は、古くから体を調えるものとして食生活に取り入れられてきた伝統があるようです。加えて旬の野菜は、自然のエネルギーに満ちていて、それを無駄なく使い、家族にたっぷり食べさせようというのが、お母さんが作るちゃんぷるー」。

自然の恵みに感謝し、食べる人の体を調える。食材の生命が人の命を作るという自明の、しかし忘れ去られがちな理を、郷土料理の中に見出したのです。それは「Origin いのちへの感謝と祈り」という今回の『DINING OUT』のテーマにも繋がっていきます。

「島袋豆腐店」。小さな工房を占拠する地釜と、小さな体でひとり工房を切り盛りする島袋氏

「島袋豆腐店」。小さな工房を占拠する地釜と、小さな体でひとり工房を切り盛りする島袋氏

出来たてのゆし豆腐。とろける柔らかさ、ほのかな塩気の優しい味わいで、いくらでも食べられる

出来たてのゆし豆腐。とろける柔らかさ、ほのかな塩気の優しい味わいで、いくらでも食べられる

島豆腐。一丁で約1キロ、ずっしりとした重みとしっかりとした固さがある

島豆腐。一丁で約1キロ、ずっしりとした重みとしっかりとした固さがある

毎日の食卓にある伝統食材「島豆腐」との出会い。

「ちゃんぷるー」に欠かせない食材に、島豆腐があります。樋口シェフは、創業60余年、昔ながらの製法を守る数少ない工房のひとつ『島袋豆腐店』を訪ねました。併設の豆腐料理店『島ちゃん食堂』は、地元の人が列を作る繁盛店。その裏手にある『島袋豆腐店』は、店というより小さな工房兼直売所といった雰囲気です。それでも出来たての豆腐を目当てに、鍋を持って買い物に来るご近所の常連が、早朝からひっきりなしという賑わい。地釜と呼ばれる大きな釜に向き合い豆腐を作るのは、この道40年というベテランの島袋幸子氏です。

「出来たては格別だよ」と、島袋氏に手渡されたゆし豆腐をひと口試食するや、樋口シェフは驚きの表情を見せます。

「大豆の風味を引き立てる絶妙な塩気、とろける食感。今まで食べてきた豆腐とはまったく別のおいしさに、感動しました」

ゆし豆腐は、型に入れて固める前の島豆腐。おぼろ豆腐よりずっと柔らかで、しっかりとした大豆の甘みがあります。島豆腐は、一般の豆腐が煮た大豆から豆乳を取るのに対し、ひと晩漬け置いた大豆を絞って豆乳を取る「生絞り」製法が特徴。木型に流し、重しでしっかり水分を切った島豆腐には、「噛める」ほど強い食感と濃厚な風味があります。個性豊かな味の強い野菜に負けず、引き立て合う。この島豆腐に出会い、樋口版「ちゃんぷるー」の着地点が見えてきたといいます。

輝く一皿に