沖縄の食文化を尊び、地元生産者、料理人すべての想いを一皿にした「ぬちぐすい」 (4/4ページ)

「ぬちぐすい」。山と盛られた色とりどりの野菜の下から、島豆腐が現れる。手でちぎってソテーすることで、香ばしさと共にソース類の味をなじませ、しっかりとした食感ながら優しい口当たりに

「ぬちぐすい」。山と盛られた色とりどりの野菜の下から、島豆腐が現れる。手でちぎってソテーすることで、香ばしさと共にソース類の味をなじませ、しっかりとした食感ながら優しい口当たりに

樋口シェフとホストの中村氏。ディナー終了後、大きな拍手でゲストの賞賛を受けた

樋口シェフとホストの中村氏。ディナー終了後、大きな拍手でゲストの賞賛を受けた

素材ひとつひとつの個性が生き、合わさって輝く一皿に。

沖縄の11月は農作物の端境期。加えて2018年は10月、二度の大きな台風に見舞われ、農作物も大きなダメージを受けています。厳しい状況下で、あらかじめ使用する野菜を決め、調理法を組み立てるのは、不可能だったと樋口シェフは話します。

「実際、使用する野菜がほぼ出そろったのは、開催前日、いえ当日です。慣れない野菜ひとつひとつを、その特徴を最大限に活かして調理ができるよう助けてくれたのが、地元のシェフ達からなる厨房スタッフチームでした」

タイモは素揚げし香ばしさとねっとりとした食感、甘みを引き出して、紅イモはバターソテーと軽やかなチップで、空芯菜やハンダマはさっと湯がいて、という具合。30種という野菜のバラエティに加え「こうすると美味しいよ」、「前にこんな料理で使った」と本番直前の厨房で行われた熱い“セッション”も皿に載った「ぬちぐすい」。樋口シェフの地元、伊勢では神饌である鰹節をつかったエミュリュションの旨みやフーチバーのピュレの香味、シークワーサーの酸味で個性ある素材の味わいをまとめました。

アゲインストな状況下で、計らずも“あるもので作る”「ちゃんぷるー」の本質を体現する一品に。同時に、「日常の食」に着想を得ながらも、大勢の手があってこそ完成する料理には、どことなく祝祭感が宿ります。沖縄の、今この瞬間の大地に、そこに生きる多くの人々の想いを重ねたのが「ぬちぐすい(命薬)」というひと皿なのです。

石造りの知念城跡。琉球王朝時代からの祈りの場でもある。本番初日は満月に照らされた

石造りの知念城跡。琉球王朝時代からの祈りの場でもある。本番初日は満月に照らされた

樋口 宏江(「志摩観光ホテル」総料理長)

三重県四日市市生まれ。1991年、志摩観光ホテルに入社。2014年には、同ホテルで初めての女性総料理長に就任。2016年に、「G7 伊勢志摩サミット」のディナーを担当し、各国首脳から 称賛を受けた。翌年、第8回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」のブロンズ賞を、三重県初、女性としても初めて受賞。今、最も世界から注目を集めている女性シェフである。

志摩観光ホテルHP:https://www.miyakohotels.ne.jp/shima/index.html