介護のプロでも音を上げる 「老老」より過酷な「若若介護」の絶望度 (3/5ページ)

 子育てであれば、日々少しずつ成長し「明日はもっとできる」と希望を持てるけれど、介護は逆にできることが減っていきます。気づくと1日がたっており、友達との約束もできなくなりました。自分の時間が全く持てないので「介護とは自己犠牲」と言い切ります。また、教育資金とちがって何にどのくらいかかるかわからず、自分も病気になって家で親を看られなくなったときに介護保険との差額はどのくらいか、など資金面の心配が大きい、とKさんは語ります。

 60、70代の親の介護をする子供世代に介護離職者が多い

 とりわけKさんが苦労したのは、母親がデイケアサービスを受けたがらなかったことでした。母親が「(デイケアの施設で)折り紙とか、お歌とか、お遊戯とかが嫌。『今日は何月でちゅか?』と子供扱いされる」と訴えたのでKさんは施設見学をしました。母親の訴えは間違っていないと感じたそうです。

 これまでは自分に時間的な余裕がないときは「施設を使ってほしい」と思っていたけれど、母親の悲しそうな顔をみるたびに胸が苦しくなったそうです。現在では「あまり行かせたくありませんね、もう少し年齢別・症状別に施設もわかれていればいいのですが……」と嘆きます。

 Kさんは地域包括支援センターの存在も知っていますが、「地域密着だと知り合いに情報が漏れそう」と活用しておらず、病院で紹介されたケアマネに介護認定の相談をしたといいます。

 60、70代の親の介護は、その家族が突然自分の時間や仕事を奪われるケースが目立ちます。総務省「就業構造基本調査」(2017年度)によると、介護離職者(介護・看護を理由に離職した人)の総数は年間9万9000人に及びます。2012年度は10万1000人でしたので、2015年11月に発表された国の「介護離職ゼロ」の重点政策後も、ほぼ横ばいの状況であることがわかります(図2)。

 体は弱っても頭がしっかりしているから抱える心の葛藤

 また、40、50代で介護することになった者(主に子供)は、これからどのようなステップが待ち受けているのか、その都度かかる医療費やもらえる介護保険料はいくらなのかという、これから先の不安、特にお金に関する心配が大きいのです。

 子育てとは異なり、経験がなく先が見えないため、不安や戸惑いが増大しています。筆者は、地域包括支援センターやケアマネージャーに相談すること、自分たちに合った介護情報(被介護者の自尊心を傷つけない施設選びなど)を集めることからはじめてほしいと考えます。

 そして、60、70代の被介護者はまだ頭がしっかりしていることも少なくないため、自分の状況を受けとめられないと、心の葛藤が生じます。初期段階の心のケアやコミュニケーションはとても大事ですので、被介護者の残存能力を損なわない工夫、近所との接し方など、介護に必要な心構えに関する情報も知っておく必要があるといえそうです。

「先が見えない絶望」