肺MAC症 軽症段階から呼吸リハビリ 長く付き合い、自己管理力向上

「わきを押さえてハーッと息を吐いて」と、たんを出す際の呼吸のこつを患者に説明する千住秀明さん=東京都清瀬市の複十字病院
「わきを押さえてハーッと息を吐いて」と、たんを出す際の呼吸のこつを患者に説明する千住秀明さん=東京都清瀬市の複十字病院【拡大】

 低下した呼吸機能の回復を目指す呼吸リハビリテーションは、肺などの病気になった患者が自立した生活を送るのに不可欠だ。結核予防会複十字病院(東京)は、10年以上かけてゆっくり進行する「肺MAC(マック)症」の治療に、比較的軽症の段階から呼吸リハビリを組み合わせている。長く病気と付き合う患者の自己管理力を高めることを狙っている。

 ◆表情すっきり

 明るい日が差す同病院のリハビリ室で、埼玉県から通院するA子さん(68)は「たん」を出すリハビリを始めた。

 ベッドに横向きに寝て深呼吸を繰り返した後、鼻から息を吸って口から「ハーッ」「ハーッ」と強く息を吐くこと数回。体を起こし「エヘン」「エヘン」と、2回ほどの軽いせきばらいでたんが出た。

 次は反対側を上に。さらに姿勢を変えて同じ動作を繰り返す。計20分ほどですべてを終え、すっきりした表情で顔を上げたA子さん。そばにいた呼吸ケアリハビリセンター部長で理学療法士の千住(せんじゅう)秀明さんが「上手になりましたね」と声を掛けた。

 A子さんが50代で診断された肺MAC症は「肺非結核性抗酸菌症」と呼ばれる病気の一種で、中高年女性の患者が増えている。環境中に広く生息するMACという略称の細菌の感染で、肺の病変が徐々に広がる。

 人から人への感染はなく進行も緩やかだが、治療しても完治が難しいため、不安を感じながら暮らす患者が多いという。

 ◆低い認知度

 A子さんは健診で肺の影を指摘された。症状はほとんどないが病変が少しずつ広がってきたため、数年前から複数の抗菌薬を組み合わせた治療を開始した。副作用でそのうち1種をやめることになった際、主治医の佐々木結花(ゆか)副院長から「呼吸リハビリをやってみる?」とすすめられた。

 以降、A子さんは明るくなったと佐々木医師は感じるという。「体を少しでも良い状態に保つ努力をしていることに、自信を感じているのでは」と推測する。高齢の人や病状によって呼吸リハビリが適さない人もいるが、「多くは薬との両輪で治療を進める意義があるのではないか」と言う。

 呼吸リハビリは、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの病気や手術などで肺機能が大きく落ちた患者に、可能な限り機能の回復や維持を目指して行われる。呼吸が苦しいと活動量が減って体力も低下しがちになるので、病状悪化を防ぐためにも適度のリハビリが重要だが、脳卒中や心臓病に伴うリハビリに比べて認知度は低く、千住さんらが同病院を健診で訪れた約2千人に尋ねた結果でも、69%は呼吸リハビリを「知らない」と答えた。

 ◆基本を指導

 肺MAC症への呼吸リハビリ法はまだ確立していない。このため千住さんらはCOPD患者向けの方法を中心に、基本的なことを指導する。例えば、たんの出し方。健康な人には何でもないことのようだが、たんがたまると空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸が苦しくなるので、きちんと出す方法を身に付けておくことは大切だ。

 せきは体力をかなり消耗するため、少ないせきで出す方法を教える。このほか、軽い運動をする際に効率的に酸素を取り込むことができる腹式呼吸なども指導している。

 千住さんは「低下した肺の機能を筋肉や横隔膜の動きで代替させるのが呼吸リハビリ。肺MAC症の人は肺以外には全く問題がないことも多いので、早くからリハビリに取り組むことで生活の質の維持に役立つと考えている。データを積み重ね、効果を検証していきたい」と話している。