【がん電話相談から】前立腺がん、低リスクだが手術したい

 Q 67歳の男性です。1年前からPSA値4・5~5・5で推移し、2カ月前、生検で12本中2本に前立腺がんが検出されました。がんの大きさは1ミリくらい、グリーソンスコアは3+3=6です。主治医から治療には手術、放射線治療、ホルモン治療があるが、低リスクなので経過観察でもいいと説明されました。今後の治療法は?

 A あなたの場合、生検で取れたがんの大きさや陽性本数、グリーソンスコアから、低リスクがんの中でも特に低リスクに分類されるため、主治医の言うとおり(PSA)監視療法が第一選択です。経過観察中に、MRI検査でがんの増大や、再生検でグリーソンスコアが3+4=7以上になるなど、がんの進行を認めたら、その時点で根治療法(手術や放射線治療)に踏み切りますが、即時治療と比較し、生存率に有意差はみられていません。

 経過観察していくと、3割程度の人が5年以内に治療介入の必要な状況になります。残る7割の人は、5年たってもがんが進行せず、普通の生活が送れます。前立腺がんの治療法はいろいろありますが、手術には性機能障害やおむつを必要とする尿失禁が、放射線治療にはやはり性機能障害と直腸や膀胱(ぼうこう)からの出血などの合併症を起こすリスクがあります。QOL(生活の質)を重視するなら、3~6カ月に1回程度の検査で、PSA値の推移を見ていくのがよいと思います。PSA値の上昇が続けば、MRI検査と再生検でがんの再評価を行います。

 Q 父が前立腺がんで骨転移したのを見ているので、やはり心配です。手術をお願いすることもできますか。

 A もちろん、手術していけないわけではありません。合併症のリスクを受容できれば、十分、選択肢の一つとなります。ただ医学的には、進行、転移をきたすリスクの低い現状では、QOLの低下を招く可能性のある治療は推奨されていないということです。

                   

 回答には、福井巌・がん研有明病院顧問(泌尿器科)が当たりました。カウンセラーによる「がん電話相談」(協力:がん研究会、アフラック、産経新聞社)は、03・5531・0110。月~木曜日(祝日は除く)午前11時~午後3時。相談が本欄に掲載されることがあります。