令和の争点

子供を育む 少子化、断ち切れぬ悪循環 (2/3ページ)

 1.57ショック-。平成元年、1人の女性が生涯に産む子供の数に当たる合計特殊出生率が戦後最低となり、社会に衝撃が広がった。あれから30年あまり。令和の日本で少子化問題は改善されるどころか、むしろ深刻化している。出生率はさらに落ち込み、平成17年には1.26に。その後、やや回復基調となったものの、それでも30年の段階で1.42にとどまっている。

 少子化は先進国共通の課題だ。フランスやスウェーデンではかつて、出生率が1.5~1.6台まで低下。その後、保育の充実や出産後の就労をしやすくする政策転換が進み、2000年代には2.0前後まで回復した。

 夫婦と子供だけの核家族が当たり前になり、親や親族に支えられる子育てが難しくなった日本社会。孤立感を深めて思い詰める母親の悩みが消える気配はない。

 参院選を前に、政府は幼保無償化や低所得世帯の大学無償化を打ち出した。与野党はこぞって子育て支援の充実を訴える。ただ、田中さんの心には響かない。夫婦での子育て分担が当たり前という風潮はあるが、やはり女性が多くを担っているように思えるからだ。

 厚生労働省の平成30年度雇用均等基本調査(速報値)によると、男性の育児休業取得率はわずか6.16%だ。「子ども手当や子連れ出勤などは母親の負担が解決されるものではない。子育てもろくにしたことのない男性政治家たちが的外れな議論をしている。日本は子育てに厳しい国だと思う」。そう話す田中さんの「心の支え」は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だったという。

 同じような悩みを抱える子育て中の母親たちの“つぶやき”を見ると、「苦しいのは私ひとりじゃない」と思えた。痛みを分かち合えるのは夫でも親族でもなく、実際に会ったこともない人たちの声だった。

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