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研究者に必要なのは「3時のおやつ」 最先端の宇宙研究所に唯一のルール (1/3ページ)

野村竜一
野村竜一

 「宇宙はどのように始まったのか? なぜ我々が宇宙に存在しているのか? 宇宙はこれからどうなるのか?」この謎を解き明かすために、数学、理論物理学、実験物理学、天文学にまたがる様々な研究者が集まる場所が東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)だ。

 この研究機構では、研究室や会議室の外で、随所に研究者同士の対話を促す工夫がされている。研究所入り口踊り場にずらっと並んだ黒板には所狭しと数式が書かれ、そこが研究者たちのディスカッションの場になっていることがわかる。そして、もっとも注目したのはこのカブリIPMUでの唯一のルールだという「ティータイム」だ。

ティータイムに生まれる“化学反応”

 毎日きっかり午後3時になるとベルが鳴り高い吹き抜けのあるラウンジに研究者たちがぞろぞろと集まる。コーヒー・紅茶とクッキーを片手に様々な分野の研究者たちが情報交換を行う。このティータイムがきっかけで超域分野の研究者が手を組み新たな研究が始まることもあるという。

 例えば、同機構の客員科学研究員であるロバート・クインビー氏は2014年、超新星が通常の30倍の明るさで輝いた現象の仕組みを解明している。この発見もティータイムでの交流が後押ししたものというのだ。同機構発行の資料はこのように紹介している。

「Robert Quimbyらの30倍明るい超新星の増光の謎を解明した研究は、このティータイムで天文学者と物理学者、数学者が議論したことをきっかけに進められた研究であり、ティータイムが融合研究の推進に役立っているという良い実例である」(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構「世界トップレベル研究プログラム10年のあゆみ(PDF)」

 研究者たちには自由な環境が与えられ出社時間など勤務体系に関する規則はほぼ皆無だという。しかし、この3時のティータイムへの出席だけは全ての在所研究者に義務付けられていると聞いた。

 人々がクリエイティビティを発揮するためには誰かがとある方向に導いたり教えたりするのではなく、人々が化学反応を起こす環境をセッティングし、その維持管理に注力することに尽きる。今年9月に我々が開校するManai Institute of Science and Technology(=マナイ)を設計するための大きなヒントを、同機構の「3時のおやつ」の時間から得た思いだった。

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