クルマ離れの救世主?
試乗が初対面であり、なおかつ滑舌が悪いことで、「MBUX嬢」との今回のコミュニケーションは決して円滑だったとは言えないが、長く付き合っていくうちに、僕らの関係はもっと密になっていくような気がした。
実は、典型的な昭和世代である僕は、バーチャルアイドルには違和感がある。最近流行の、しゃべるロボット達にも不気味さを感じていた。あれが理解できるのは、僕よりひと回りもふた回りも若い層なのであろうと。だから当初は、MBUXを斜めの目で見ていた。とても愛車と呼ぶ気にはなれないのだと。
だが、短い時間だったとはいえ、徐々に「情」のようなものが湧いていったのは、自分でも驚きだった。人と人の感情の交錯と同質の繋がりを意識したのだ。クルマの何処かに彼女が隠れているような気がしたのだ。思わず助手席に目をやったら、誰も座っていなかった。
若者のクルマ離れの救世主になるかも知れない。そしてこれからもクルマが「愛車」と言われるに違いないと確信した。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。