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数夜限定の晩餐「ダイニングアウト」の魅力 それは一期一会の贅沢な体験 (3/4ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 コースの合間のサプライズ…非日常を愉しむ

 アミューズのあとに、ちょっとしたサプライズがあった。棟方志功が手掛けた浅虫温泉の観光ポスターが披露されたのだ。県立美術館にも同じ作品が展示してあったのだが、ディナーで披露されたのは立派な額に収められた大きな原画だ。青い空、紺碧の海、そして濃緑(こみどり)に塗られた湯ノ島の存在感が一段と力強い。ゲストとして招かれた孫の石井頼子さんから棟方志功との思い出話を聞くこともできた。アートと地元青森に対する思いは人一倍強かったようだ。

 やがてディナーはメインコースへと移った。こちらも「とにかくたくさんの食材を味わってほしい」との目黒シェフの願いから、小さいポーションの料理が次々と運ばれてくる。

 それなりに世界を旅した経験があるが、この日振る舞われた料理はどれも、これまで味わったことのないものばかりだ。例えばジャガイモのニョッキに生ハムを添えて、陸奥湾で取れたスルメイカを塩辛にして和えた一皿。まず、これら食材を組み合わせるその発想力に驚かされたが、ひとたび口に運べば主張の強い食材たちがしっとり上品に解け合うのだ。

 3日ほど寝かせたイシナギはゼラチン質が豊富で美味。カリカリの皮も香ばしい。わざわざ八甲田山まで取りに行ったという根曲がり竹のソテーを添えるこだわりようだ。マグロの中トロは表面をグリエしており、黒ニンニクとキャラメリゼした玉ねぎから作った甘くて香ばしいペーストを添えている。締めのリゾットも厚みのあるアワビの歯ごたえが何とも贅沢。肝と焦がしバターを合わせた濃厚ソースがリゾットの風味を引き立てる。目黒シェフの自由でときに突飛なオリジナリティーに溢れるメニューをじっくりと堪能することができた。

 青森の美食を満喫する我々にさらなるサプライズが用意されていた。合図とともに照明が落とされると辺り一面が暗転し、スタッフの動きが止まると、突如の静寂に包まれた。やがて眼が暗闇に慣れてくると、頭上に満天の星空が現れたのだ。

 「こんなに美しい空を東京では見ることはないなぁ…」

 すると突然、海から一筋の光がスーッと上がった。

 ヒュルヒュル~~~。パァァァーーーーーン!!!

 なんと、湯ノ島から夜空に向かって大きな花火が打ち上げられたのだ。しかも何発も…。

 「えっ、もしかしてウチらのために上がってる?」

 そう、これは町の夏祭りでも何でもない。ダイニングアウトに参加した40名のゲストのために、湯ノ島から大玉が立て続けに打ち上げられているのだ。

 「町の人々は知っているのだろうか? いまごろ何事かとビックリしてんじゃない…?」

 こんな贅沢なことがあるのかと、実際に目の前で起きている光景に仰天してしまった。これは町を挙げての一大イベントなのだ。そのスケールの大きさに鳥肌すら立った。

 赤、緑、紫…。花火の明かりに照らされ闇夜に浮かび上がる湯ノ島のシルエット。絵の具を引き延ばしたかのように様々な色に染まる海面。先ほど見た棟方志功の作品そのままだ。青森開催のダイニングアウトの最後を飾るにふさわしいフィナーレ。彼が描いた浅虫の美質を盛大な花火とともに、大きな夜空に再現して見せたのだ。

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