ヘルスケア

子宮頸がんワクチン 健康被害の議論続く

 国がHPVワクチン接種の勧奨中止を続けてきた背景には、接種者の一部が訴える健康被害が、実際に接種によって生じたのか、そうではないのか議論が続いている現状がある。一方で予防接種の効果は複数の調査・研究で示されており、婦人科医師の間には患者増加への懸念が根強くある。

 子宮頸がんは国内では年間約1万人が罹患し、約3千人が死亡。近年は20~40代前半の患者が増加する。厚生労働省によると、HPVワクチンの接種により、10万人当たり595~859人が子宮頸がんになることを回避できると推計されるという。

 大阪大の上田豊講師(婦人科腫瘍学)らのチームは、20歳女性が受けた子宮頸がん検診の結果を分析。調査対象の全員がワクチン未接種だった平成3~5年度生まれの7872人で、子宮頸がんの手前の段階とされる「CIN3」(高度異形成と上皮内がん)が7人いたのに対し、約8割が接種を受けた6~8年度生まれの7389人はCIN3が0人だった。上田氏は「接種で、子宮頸がんになる人を将来減らせると予測できる」と強調する。

 一方で「健康被害報告」も相当数ある。厚労省によれば、頭痛などの症状で「副反応」が疑われたのは10万人当たり92人。接種時の痛みや不安などが影響を及ぼした「心身反応」との専門家の見解などもあるが、健康被害を訴える患者らは「症状が違う」などと反論。厚労省は勧奨再開の判断を先送りにしている。

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