理想的な操作方法を考える必要性
レーシングエンジンはギリギリまで高回転域での高性能を追求するがあまり、低回転域、つまり、発進やトロトロ運転すると、簡単にエンジンがストール(エンスト)してしまうのだ。その点でも、繊細な指先の感覚に頼るのは正しいような気がする。
それでも、クラッチパドル操作を誤ることがある。スタートでミスをした場合には、エンジンがストップしてしまわないように、電気的にクラッチが遮断される機能が組み込まれている。レース中のスピンも同様で、予期せぬ旋回モーメントの変化を確認すると、マシンが自動でクラッチを遮断。エンジンストールを防ぐのだ。
クラッチ操作は指先に集約した方がいいなどと断言するつもりはない。だが、人間、慣れればクラッチ操作など、左足でなくても指先でも器用にこなす生き物である。まして、ブレーキ操作など、もはやレースの世界では語られることもないほど常識になった。いま一度、理想的な操作方法とは何かを考えるのも必要なのかもしれない。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。