趣味・レジャー

なぜ由布院は13年連続で「温泉日本一」か 必死で残した「日本の原風景」 (3/4ページ)

 由布院温泉観光協会を12年務めた桑野和泉氏(由布院玉の湯社長)は、溝口氏の長女だ。今年、40代の新会長に譲り、自らは常任顧問となった。故・志手氏の妻の淑子氏は桑野氏の前任で、同観光協会元会長。現在は娘婿の志手史彦氏が、山のホテル夢想園社長を務める。市や観光協会には施策に精通した実務家もいる。

 由布院の強みは、こうした「認識の共有度」と「スムーズな世代交代」にもある。

 現在でも、由布院には高いビルがない。宿泊場所の旅館は個人経営で、大資本が経営する大型チェーンはゼロ。飲食店もほとんどが個人経営だ。数少ない例外が、大分県が本社のファミリーレストランで、この店が進出する時も反対運動が起きた。個人店が連携して、創意工夫でお客をもてなすのがモットーだ。

 そして、まずは住む人ありきという「生活型観光地」を掲げる。宿泊施設や飲食店で働く人の多くは近くに住んでいる。自分たちが生活して、初めて「課題」も見えてくるのだ。

 リピート客が増えない原因「定番がない」

 その課題は、例えば「魅力の深掘り」だ。冒頭の調査項目にあった「もう一度行ってみたい」温泉地では、由布院は6位とランクを下げた。これまで箱根温泉(神奈川県)、草津温泉(群馬県)に次ぐ3位が定位置だったが、そのブランドに陰りが出てきたのか。

 由布院は2016年4月の「熊本地震」(熊本・大分地震)で被害を受けた。建物の損壊は一部を除いて軽微だったが、観光は大打撃を受け、予約キャンセルが殺到した。

 3年たち、客足は戻った。由布市の調査による「平成30年観光動態調査」では、2018年に同市を訪れた観光客(日帰り+宿泊客)は442万1672人。対前年比114%となった。

 「調査データの総数のうち、約9割が由布院温泉なので、由布院への観光客数は約400万人となっています。熊本・大分地震の前よりも多くの方が来られるようになりました」長年にわたり観光客と向き合う、由布市まちづくり観光局・事務局の生野(しょうの)敬嗣(けいじ)次長は、こう説明する。

 観光客数が回復したのに、「もう一度行きたい」が下落した理由を各地で聞いてみた。関係者は懸念しつつ、冷静に受け止めていたのが印象的だった。

 「由布院には『定番』がないのです。由布岳があり、温泉も多い。でも具体的な観光ルートは漠然としていた。それは私たちの訴求不足だったと反省し、JR由布院駅の隣に『由布市ツーリストインフォメーションセンター』を開設し、お客さまに対応しています」

 観光協会・前会長の桑野氏はこう話す。生野氏も「訴求の工夫」を指摘していた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus