IT風土記

富山発 公共交通を軸にしたコンパクトシティ戦略が見据える未来とは (2/3ページ)

「うまいものは小勢で」改め、「自慢できる街」に

 花束を持って路面電車に乗ると運賃が無料になるというキャンペーンなど「おしゃれ」な街を目指した政策を展開し、話題を集めた。森市長は「富山には『うまいものは小勢で』と言う言葉がある。『おいしい』ことは誰にも言わず『秘することが花』であるという文化があった。ただ、コンパクトシティ戦略を進める中で、今では、花があふれ、おいしい食材を安く食べられる富山に住むことを自慢する市民が増えてきた」と意識改革に手応えを感じている。

 アステラス製薬や富士フイルム富山化学など富山に拠点を設け、事業を強化する企業は増えている。富山市がある企業にヒアリングしたところ、社員の3分の2は所帯を持っているが、そのうちの半分は家族で富山に来るという。家族を連れてこなかった理由を問うと「『高校生がいると編入が難しい』ということだったが、『子供が高校を卒業したら、家族を呼び寄せたい』と考えている人もいた」という。

 人口減少は続くものの、高齢化が進む地方都市にもかかわらず、その速度は全国平均と変わらない。転入超過が7年連続しており、人口減少にブレーキがかかり始めている。市税は企業収益の増加などにより、周辺の6町村と合併した2005年以来、過去最高となっている。コンパクトシティ戦略の恩恵は、都市部への集中投資に不満を抱きがちな中山間地域の過疎対策にも注がれる。森市長は「データを示して丁寧に説明することをすれば、富山市民の理解は得られるはずだ」と自信を深めている。

 街の回遊性が向上 南北の路面電車が接続へ

 富山地方鉄道と、第三セクターで路面電車を運行する富山ライトレールは、2020年2月に合併する方針を示した。JR富山駅南側を走る富山地方鉄道富山市内軌道線と、JR富山駅北側に発着する富山ライトレール富山港線を富山駅で接続させ、直通運転するという「富山路面電車南北接続事業」に弾みがつく。

 公共投資が呼び水となり、中心市街地では商業施設や文化施設などへの民間投資も活発化している。富山市がイメージする街は、欧州の古都、オーストリアのウィーンだ。旧市街を環状に取り巻く「リング通り」は、商業施設や文化施設が並び、環状線になっている路面電車で結ばれている。

 富山市が路面電車での移動を推奨する背景には、中心市街地での滞在時間を長くしてもらいたいという狙いがある。「自家用車で来る人は目的地に来てすぐに帰るが、路面電車やバスで来る人は街を楽しみ回遊してくれる人が多い」と森市長は言う。

 公共交通機関で来ると、お酒を楽しめるという効果もある。富山市のコンサートホールにあるカフェでは、コンパクトシティ戦略の進展に合わせるように、幕間のワインがよく売れ始めたという。

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