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老後資産形成へ税制優遇でも「iDeCo」が広まらない本当の理由 (2/3ページ)

高橋成壽
高橋成壽

 投資対象の選定が困難

 iDeCoを始めるにあたって、どこの金融機関に問い合わせればいいか知っている人はいるのだろうか。インターネットでiDeCoと検索すれば、証券会社の広告、iDeCoの公式サイト、厚生労働省のホームページ、銀行のホームページなどが検索結果として表示される。

 どこの金融機関に申し込めばいいのだろう。何を比較すればいいのだろう。そもそも金融機関ごとの違いは何だろう。そんなことを考えながらウェブサイトを比較しても結論は出ない。iDeCoに加入するコストは、どこも似たり寄ったりで違いがわからない。しかし、比較検討の対象は二桁を超える。人間は選択肢が多いと選べなくなるのだ。従って、金融機関選定の段階でも、かなりの人が脱落し、資料請求にたどり着かない。そもそも、iDeCoの相談先がどこにあるのかわからない。金融機関に相談したら営業されそうだから、ネットで比較したい。ファイナンシャルプランナーに相談するのもいいのだが、お金を払いたくはない。となると、自分で調べるしかないのかもしれない。

 加入にたどり着いたとして、次のハードルは投資先銘柄の選定である。大体は、預金と保険、その他数本の投資信託が商品ラインナップとなっている。これらの銘柄はどうやって選べばいいのだろうか。投資金額を割り振るパーセンテージも自分で決めるようだが、何を基準にすればいいのだろう。似たような投資信託がたくさんあるが、明確な違いがわからない。損したくないと考えると、預金にすべきなのだろうか。

 商品ラインナップは銀行や証券会社は自社系列の商品ばかり。加入者のために選定しているというより、自社グループの利益を確保するために商品を選んでいるようにしか見えない。とすると、加入者目線でない金融機関で口座を開設してしまったのかもしれない。商品を調べるほど、このような疑心暗鬼に陥ることもあるだろう。中立的な立場で商品を選ぶ金融機関もあるだろうが、商品ラインナップが多すぎると選びきれないという問題も発生する。損をしたくないから、間違いのない商品を選びたい。ただ、それを教えてくれる人は誰もいないし、そのような正解は存在しないことも誰も教えてはくれない。

 相談できるアドバイザーが身近に居ない

 筆者を含めたファイナンシャルプランナーが、iDeCoの相談を受けるのにふさわしいと考える人は多いようで、実際に色々な方からiDeCoの相談依頼が来る。しかし、銘柄選びの手伝いは法令違反になるので対応できないことを皆知らない。これはそもそも知っている人が少ないのだが、投資のアドバイスを仕事として実施するには投資助言・代理業という仕事の登録を財務局(金融庁の出先機関)に行う必要がある。筆者も含めて、ほとんどのファイナンシャルプランナーが投資助言・代理業に関して無登録であるため、銘柄選定のアドバイスができないのが実態だ。

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