クルマ三昧

あおり運転の被害を減らすために…「あおられた側」の“体験共有”が大事 (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 法定速度以下で走っていたのか

 「トロトロ走っていたから、頭にきた」。そういうドライバーも少なくない。そのトロトロ加減はいかようなのか。高速道路の追い越し車線を、法定速度以下で走行しつづけていたのか。あるいは正常な流れだったのか。

 パッシングはあるときには良好なコミュニケーションツールになることがある。速度無制限道路アウトバーン(ドイツ)では、「ちょっと急いでいますよ」という意味を込めてパッシングが上手に活用されている。日本でも「お先にどうぞ」の譲り合いの気持ちをこめてパッシングされることもある。その優しさに対して「ありがとう」とパッシングすることもある。パッシングひとつとっても、威嚇と互譲の意味が交錯する。それが誤解を生み、反社会的パーソナリティ傷害者を刺激したとするのならば、その程度やタイミング等を我々は共有する必要がある。あおる側の運転とともに、あおられた側の運転も知りたいのはそれが理由だ。

 被害を知ることで再発防止につながる

 実は、譲り合いのしぐさや合図をテーマにした記事を執筆したところ、侃々諤々、様々な意見をいただいたことがある。肯定意見ではなく、反論も少なくなかった。そこで僕が語りたいのは、互譲のしぐさは三者三様であり、優しい気持ちで行ったしぐさが威嚇と誤解される危険性を含んでいることだ。ことほど左様に、交通環境でのコミュニケーションは繊細で神経質な性格を含んでいるのである。

 という考えを前提にすると、「あおり運転された側の運転」を広く報道することによって、被害から逃れる可能性が増えるのではないかと思う。被害者の落ち度があったとしているのではない。被害者の体験をもっと詳細に知ることによって危険運転再発防止に結びつくのではないかと思う。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。

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