教育・子育て

「食べなくちゃ」からも解放 2歳児に「給食とり放題」させる保育園の狙い (3/3ページ)

 「食べない」の責任は自分で取る

 お昼ごはんに関連して、もう一つ。

 うちはそもそも、遊びに夢中だったりお腹が空いていなかったりして「いまは食べたくない」と子どもが思ったら、食べなくてもかまいません。保育士は「お昼の時間だけど、どうする?」と聞きますが、決めるのは子ども本人です。

 ただ、「食べない」と言っても、ほんとうに食べなければ、当然あとでお腹が空いてきます。そのとき子どもが「先生、ごはんほしい」と言ってきたら、「あら、さっきはいらなかったけど、やっぱりお腹が空いちゃったのね」なんてお話ししながら、一緒にごはんを探しに行くのです。

 もし、まだクラスのバイキングのお皿に残りがあれば、「どうぞ」。

 クラスにもう残りがなかったら、「おいしくてみんな食べちゃったんだね。困ったね。じゃあ、となりのクラスを見てみようか」。

 そこにもなければ、「給食のおばちゃんのところに行ってみようか」。

 給食室にもなければ、「なかったね。みんな食べちゃったんだね」と言っておしまいです。運がよければ食べられるけれど、そうでなければ自分で自分の選択の責任を取るしかないね、というわけです。

 「先生、取っておいてね」に変わる

 ただね、子どもって利口なの。だんだん、「食べない」から「取っておいて」と言うようになってくる。「大川先生、ぼくの分、取っておいてね! あとで食べるから!」って。

 けれど、その子の分を取っておくと、また別の問題が起きます。いつまでも食べないと、おかわりしたい子が「先生、あそこに残ってるやつ食べたいよ!」と主張し出すのです。それに、いつまでも取っておくと衛生面も心配でしょう。

 そこで、子どもたちとルールを決めることにしました。

 「みんな、お昼ごはんを取っておいてほしいときがあるよね。でも、食べるか食べないかわからないとおかわりしたい子がかわいそうだし、ずっと置いておくと腐ったりして危ないの。さて、どうしましょうか」

 みんなでああだこうだ意見を出し合った結果、「取っておく時間を決めよう」ということになりました。時計のながい針が3のところになるまで(13時15分まで)は、取っておいてあげよう。それを過ぎたら、ほしい子にあげちゃおうって。

 「自分」で決めたルールを子どもたちは守る

 そのルールをつくったのは「みんな」、つまり「自分」でもあるわけです。

 だから、子どもたちはちゃんと守ります。食べたかったら13時15分になる前に戻ってくるし、遊びに夢中で決めた時間を過ぎてしまったら、ほかの子が食べても文句は言わない。

 でも、そういうときはお腹が空いて仕方がないから、次は同じ間違いをおかさないよう慎重になりますね。

 こんなふうに、なにかを決めるときに保育士が一方的にルールを押しつけることはありません。みんなで考えて、話し合って、納得できるルールを決めるのです。

 ときにはお題自体も子どもたちから出てきます。

 ケンカも、子ども同士で仲裁し合っています。

 大げさかもしれないけれど、民主主義の基礎がつくられているんじゃないかしら。

 ありがたいことに、小学校の先生や周りの大人の方々から「小俣幼児生活団にいた子どもたちは問題解決能力が高い」と言っていただけるのは、こうした保育のおかげかなと思います。

 おうちでも、親が決めたルールを子どもに守らせるのではなく、一緒にルールを決めてみてはいかがでしょうか。

 反発心の強いきかん坊でも、「自分が考えて決めた」という意識が芽生えれば、得意げに守ってくれるかもしれませんよ。

大川 繁子(おおかわ・しげこ) 小俣幼児生活団 主任保育士
 足利市小俣町にある私立保育園「小俣幼児生活団」の主任保育士。1927年生まれ。1945年、東京女子大学数学科入学。1946年、結婚のため中退。1962年小俣幼児生活団に就職し、1972年に主任保育士となり、現在に至る。足利市教育委員、宇都宮裁判所家事調停委員、足利市女性問題懇話会座長などを歴任。モンテッソーリ教育やアドラー心理学を取り入れた創立70年の同園で、およそ60年にわたり子どもの保育に携わっている。

 (小俣幼児生活団 主任保育士 大川 繁子)(PRESIDENT Online)

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