湖国の鉄道さんぽ

車両の角「面取り」なぜ 車体の長さに秘密 

 近江鉄道の一部の車両を見ると、車体の裾部分の角が斜めに切り取られていることにお気づきだろうか。いずれも西武鉄道から移籍してきた車両だが、近江鉄道で使用するにあたって施された改造。カーブが急など、近江鉄道の路線の特徴に対応している。

 現在、営業運転を行っている近江鉄道の車両で、裾を切り取る「面取り」と呼ばれる改造がなされているのは、西武から譲渡された401系を種車にした800形、820形。車体が黄色かったり、企業とのコラボでラッピングされたりしている編成で、人気のイベント電車「近江ビア電」「ワイン電車」などに使用されるのも800形だ。

 なぜ、面取りという改造が必要だったのか。その要因は「車両の長さ」。この形式は平成に入るころまで近江鉄道の主力だった旧性能電車を置き換えるために導入された。新時代を担う800形の第1編成が完成した後、ある問題が判明した。800形が走れない個所が見つかったのだ。

 800形の1両あたりの長さは従来の車両より3~4メートルほど長い20メートル。ところが、ホームなどの地上設備は、短い車両に対応したもので、長い800形が乗り入れるとカーブなどによるはみ出しが大きくなり、車両が沿線の構造物と接触してしまうのだ。

 問題の個所のひとつだったのが八日市線の武佐(むさ)駅。近江鉄道によると、試運転電車が八日市方面から大きい右カーブで駅に入線する際、左側にあるホームに当たる可能性のあることが判明した。

 そこで採用されたのが面取り。800形に代わって急遽(きゅうきょ)、平成9年に完成させた820形は前面を含めた車両下部の四隅を切り取り、カーブでのはみ出しを小さくして構造物に当たらないようにした。遅れて営業運転に入った800形は連結面のみに面取りを施して対応した。

 その後、20メートル電車に対応すべく、ホームを削るなどの工事が進められたため、800形の後に登場した900形、100形は面取りする必要がなくなった。

 近江鉄道の車両を見る機会があれば、車体の角を切り取る独特の改造を確認してみてください。

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