近年、人間でいえば後期高齢者にあたるようなご長寿猫が珍しくなくなってきた。大切に育てられ、大けがをしたり、深刻な感染症にかかったりすることが減り、長生きの傾向にあるためだ。とはいえ、人間と同じように加齢に伴う病気からは逃れにくく、猫なのに高いところから、跳んで膝を痛める心配さえ出ている。猫ブームが続く中、大阪の住宅設備機器メーカーは膝にやさしいフローリングを発売。猫らしい一生をおくらせるため、健康寿命にも気にかける時代が到来した。(黒川信雄)
室内暮らしの猫がほとんど、平均寿命は約15年
猫は、何歳くらいまで生きてくれるのだろうか。
一般社団法人ペットフード協会(東京)の調査では、平成30年の飼い猫の平均寿命は15・32歳(人間換算で約76歳)。27年以降、4年連続で15歳を超えた。
8年前の統計と比べると、平均寿命は1歳近く伸び、13歳以上の猫の割合は17・1%にのぼる。そのうち、人間でいえば80歳以上に相当する16歳以上は7・8%を占める。
飼育状態の調査では、室内暮らしの猫が大半だ。主に野外で飼われている猫は2%と極めて少数派。猫は外出させず、適切な運動環境を家に備えて飼うと、長生きするといわれる。
街中では「野良猫とのけんか」「交通事故」「おいしそうな残飯の誘惑」…と、命を縮めるリスクがあちこちにある。猫の排泄物をめぐり、ご近所とトラブルを起こさないよう、室内で飼う家庭は多い。飼育の仕方に気を配ることで、長生きにつながっている可能性がある。
膝痛めにくい、猫フローリング
ただ、年齢とともに避けられないのが体の衰えだ。
「人間と同様に関節炎、肥満、がんなどに罹患する猫も増えている」。東京都港区で猫専門医院「東京キャット・スペシャリスツ」を開業する山本宗伸院長はこう話す。
住み慣れたはずの家で、年を取ると思わぬアクシデントに合うのも人と同じ。
猫は体長の約5倍の跳躍力があるとされ、高低差のある空間が大好きだ。しかし、若いころに平気だったフロアでも、高齢になると着地の際に膝を痛めやすくなる。
膝が痛いと、猫も運動をしなくなり、太りやすくなる。それにあわせて疾病の危険性が高まってしまう。