試乗スケッチ

プリウスと競合も? 令和時代にターボ&MTを投入したカローラの“進化” (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 とはいうものの、日本市場を見限って、海外に活路を求めたわけではない。全長は85mmも長くなり、全幅は50mm拡大した。全高は50mm低くなった。海外でも見劣りしないサイズになった。だが、トヨタによれば「日本にジャストフィット」な国内専用パッケージだという。

 これほど走りが良くなるとは…

 ボディは拡大したものの、最小回転半径は抑えられており、日本の狭い道での取り回しは悪化していない。狭いコインパーキングでの駐車を考慮して、ドアミラー格納時の幅を抑えている。ドアの開け閉めの苦労はない。日本の道を無視してはいないばかりか、細工は痒いところに手が届く。

 それでいて、走り味にも力をこめた。TNGAプラットフォームによって、低重心感覚が強い。コーナリングは、路面に吸いつくように安定している。特にライントレース性に力を込めたようで、ドライバーの疲労を抑えた走り味を求めているのだ。

 トヨタの言葉を借りれば「直結性」だという。目線がキョロキョロと彷徨うことなく、安定したままドライブできるように、路面からの突き上げを抑え、ステアリングの反応を素直にしたという。

 たしかに、首都高速の流れをややリードするようなペースで流していても、意図したラインを正しくトレースすることができた。直進性と、エンジンを震源とする微振動が気になったものの、かつての「大衆車のカローラ」ではなく、走りに優れたカローラになったような気がするのだ。

 正直に言えば、これほど走りが良くなるとは想像していなかった。営業マンの足として、燃費と価格と使い勝手だけがカローラが期待される要件かと思っていたが、考えを改めなければならない。

 そこで気になるのはプリウスとのカニバリである。心配になってしまうのは、ハイブリッドしかもたない同門のことだった。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。

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