とはいうものの、日本市場を見限って、海外に活路を求めたわけではない。全長は85mmも長くなり、全幅は50mm拡大した。全高は50mm低くなった。海外でも見劣りしないサイズになった。だが、トヨタによれば「日本にジャストフィット」な国内専用パッケージだという。
これほど走りが良くなるとは…
ボディは拡大したものの、最小回転半径は抑えられており、日本の狭い道での取り回しは悪化していない。狭いコインパーキングでの駐車を考慮して、ドアミラー格納時の幅を抑えている。ドアの開け閉めの苦労はない。日本の道を無視してはいないばかりか、細工は痒いところに手が届く。
それでいて、走り味にも力をこめた。TNGAプラットフォームによって、低重心感覚が強い。コーナリングは、路面に吸いつくように安定している。特にライントレース性に力を込めたようで、ドライバーの疲労を抑えた走り味を求めているのだ。
トヨタの言葉を借りれば「直結性」だという。目線がキョロキョロと彷徨うことなく、安定したままドライブできるように、路面からの突き上げを抑え、ステアリングの反応を素直にしたという。
たしかに、首都高速の流れをややリードするようなペースで流していても、意図したラインを正しくトレースすることができた。直進性と、エンジンを震源とする微振動が気になったものの、かつての「大衆車のカローラ」ではなく、走りに優れたカローラになったような気がするのだ。
正直に言えば、これほど走りが良くなるとは想像していなかった。営業マンの足として、燃費と価格と使い勝手だけがカローラが期待される要件かと思っていたが、考えを改めなければならない。
そこで気になるのはプリウスとのカニバリである。心配になってしまうのは、ハイブリッドしかもたない同門のことだった。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。