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秋田の劇団が年間25万人も集客する理由 劇場飛び出す「わらび座」の強さ (1/2ページ)

 秋田を拠点に、民族芸能を軸にしたオリジナル作品を70年近く発信し続けてきた劇団「わらび座」。その本拠地「わらび劇場」(秋田県仙北市)が、開場45周年を迎えた。当初は「熊や猿に芝居を見せるのか」とまで言われた田んぼの中の劇場だったが、今や劇場を擁する「あきた芸術村」と全国公演に、年25万人が足を運ぶ。文化の東京一極集中が解消されない中、気を吐くわらび座の秘密を探った。(飯塚友子)

 一流の「ローカル」作品へのこだわり

 客席数約670の「わらび劇場」で今年、上演されている新作は「いつだって青空~ブルマー先生の夢~」(栗城宏演出)。明治時代、米国留学から帰国後、日本女性にスポーツとブルマーを伝えた秋田出身の教育者、井口(いのくち)阿くり(1870~1931)の奮闘を描くミュージカルだ。

 “良妻賢母”が求められていた時代、着物から解放されたブルマー姿の女子生徒と、井口(鈴木潤子)がはつらつとダンスや体操に励む場面など、ミュージカルとして見どころ満載だ。パラリンピックを前に、「日本女子体育の母」の歴史秘話を伝え、また井口が地元・秋田音頭を披露すると、客席は一層の盛り上がりを見せた。

 脚本・作詞は劇団四季出身で、黒澤明監督の代表作「生きる」の舞台版脚本などが高く評価されている劇作家、高橋知伽江(ちかえ)。過去も、わらび座の創作には、脚本家のジェームス三木氏や作家の内館牧子氏、舞台美術家の妹尾河童氏ら、第一線で活躍する演劇人を迎え、新作を発信し続けてきた。東京で俳優を寄せ集め、短期の稽古で作る舞台と違い、わらび座は自前の養成所で育てた俳優を使い、構想から数年がかりの準備期間を経て、創作に集中できる環境がある。

 わらび座の山川龍巳社長は、「日本最高の才能を集め、郷土の歌や踊りを使った新しい表現で、特に子供に故郷の先人の生き方を伝えたい」と、ローカルにこだわったオリジナル作品への思いを語る。

 劇場を飛び出し、多角経営

 地元芸能や歴史劇を上演する劇団は、全国各地に存在する。その中でわらび座の名を全国区たらしめるのは、作品の質を支える多角経営だ。

 「普通の劇団は、劇場という客席だけを経営資源にするから苦労する。わらび座は劇場を飛び出し、芸術を基盤とした壮大な実験を続ける集団」(山川さん)という自負は、本拠地に足を運べば納得がいく。

 東京から秋田新幹線で3時間かかる、わらび座の本拠地「あきた芸術村」には、劇場を中心に、日帰り温泉やホテル棟、レストラン、海外で優勝経験多数の地ビール「田沢湖ビール」の工場、観光農園、オーダー家具を受注する工芸館などが10万平方メートルの森の中に結集する。

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