AYA世代の日々 がんとともに生きる

(9)元SKE48 矢方美紀さん「私の人生は病気だけじゃない」 (1/2ページ)

 25歳の若さで乳がんと診断された、元SKE48の矢方美紀さん(27)。おととしの春に闘病を公表した。今もホルモン治療を継続中だが、「病気だけが私の人生ではない」と、夢だった声優への道を一歩一歩進んでいる。(油原聡子)

 〈平成30年4月、左乳房の全摘手術を受けた。退院後に病名を公表した〉

 手術後の病理検査の結果はステージIIIAでした。抗がん剤の副作用で髪も抜けるだろうし、見た目で分かってしまう。理由を伏せたままだと違う病気と誤解されてしまうかもしれない。事務所と相談して、「乳がんだけれど無理のない範囲で前向きに仕事をしたい」という意思をブログで公表することになりました。

 正直な気持ちを知ってほしかったけれど、反応が怖かった。「25歳で乳がんになるんだ」と驚いた方もいれば、「この子は死ぬんだろうな」という声もありました。どんなに「私は大丈夫」と伝えても、「死ぬの?」とか「病人らしく過ごすべき」と言われ、嫌気がさしたときもありました。

伝わらないつらさ

 5月に抗がん剤治療が始まると、副作用で顔がむくみ、髪が抜けました。味覚障害で食べ物がおいしく感じられない。自分の体のにおいもだめになりました。傷口が臭く感じるんです。

 仕事では、ウイッグを着け、左胸がないのを隠すためにダボっとした服を着ました。抗がん剤治療で体力が落ちていたので、気持ちは元気なのに声に覇気がない。「がんばりたくてもそれが伝わらないつらさ」を抱えていました。

 それでも、知り合ったがん患者さんから「治療が終われば副作用は落ち着く」とアドバイスをもらっていたので、「髪の毛もだんだん生えてくる。落ち込むことはない」って自分に言い聞かせました。

 アニメ作品にも励まされました。登場人物は何かに心が折れてもけがを負っても、倍くらいの勢いで突き進む。「この主人公は、こんなけがを負っているのにしっかりと前を向いて立ち上がっている」って自分に置き換えていました。

 11月からはホルモン治療が始まり、10年間続きます。精神的に不安定になることも多いけどやるしかない。これも運命だから。

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