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終電延長実証実験で“夜間経済”創出されるか 観光戦略の鍵握る「夜間娯楽」

 国土交通省は24日深夜から25日未明にかけ、大阪メトロ御堂筋線で終電を午前2時台まで約2時間遅くする実証実験を行った。沿線一帯は、未明まで営業する居酒屋やバーが軒を連ねる繁華街。いつもより、終電を気にせずに週末の夜を楽しむ人々でにぎわった。実験は2月21日も行われる。

 訪日外国人客の増加を踏まえ、沿線エリアの夜間の消費動向を調査し、観光施策などに役立てる狙い。今夏の東京五輪期間中には、終電延長が予定されている東京都内でも同様の調査を検討している。

 御堂筋線の江坂(大阪府吹田市)-なかもず(堺市北区)間で通常の終電の後、15分間隔で列車を増発。最も遅いのは、なかもず発が午前1時47分(同2時27分新大阪着)、江坂発が午前1時56分(同2時41分なかもず着)となった。

 いつもの終電時刻が過ぎたなんば駅(大阪市中央区)。午前1時前まで同僚と飲んでいた大阪市東淀川区の会社員、堀之内亮介さん(26)は「いつもは終電に間に合うように切り上げるが、今日は時間を気にせずに飲めた。金曜だけでも実施されれば利用したい」と話した。

 大阪府吹田市の男性会社員(36)は「仕事で終電まで働くことも多い。最寄りの千里中央駅まで対象区間を伸ばしてほしい」と期待を寄せていた。

 国交省は今年度中に調査結果をまとめ、大阪メトロや自治体に提供する予定。大阪メトロは調査結果を今後のダイヤ編成に役立てる方針だ。

 一方、保守作業を行う社員の働き方改革の一環で、JR西日本は近畿エリアの在来線の終電時間の繰り上げを検討している。

 狙いはナイトタイムエコノミー創出、膨らむ地元の期待

 今回の実証実験の狙いは「ナイトタイムエコノミー(夜間経済)」の創出だ。訪日外国人客数は増加している一方、1人当たりの消費額は横ばいとなっており、夜間娯楽の充実が今後の観光戦略の鍵を握るとされている。とりわけ大阪は東京と比べて夜間娯楽が少ないとされ、地元からは地下鉄の終電延長に期待する声が上がる。

 大阪観光局が平成27~28年に訪日客を対象に行った調査では、飲食やショッピングを行うピークが大阪市内では午後9時台にあり、東京都新宿区内より2時間程度早い。夜間に楽しめる娯楽施設が少ないことが背景の一つとされる。

 それだけに、同観光局の担当者は「終電が延長されれば、人の流動が生じてビジネスチャンスも出てくる。夜に商売をしようとする人も増え、経済活性化につながる」と前向きにとらえている。

 一方、深夜営業の飲食店が多く集まる北新地では、これまで終電後に界隈に集うタクシーの混雑が問題視されてきたが、終電延長が緩和につながる可能性もでてきた。北新地社交料飲協会の徳永真介外務部長(44)は「北新地にとってはいいことずくめだ」と歓迎し、実証実験にあわせて自身が経営するレストランで、午前0時以降に飲み物を半額にするキャンペーンを展開している。

 ただ、全体的に周知が十分とはいえず、今回の実験でも車内の乗客はまばら。「駅に来て初めて知った」などと話す乗客もいた。ミナミにある道頓堀商店会の北辻稔事務局長(68)は「周りには実験をすることを知らない人が多い」とした上で「深夜営業の施設を利用するのは徒歩圏内の宿泊客が多く、終電延長したからといってどれだけ消費が増えるのかは不透明だ」と話した。(江森梓)

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