試乗スケッチ

新型ヤリス、常識覆す完成度のヒミツはプラットフォームにあり (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 相反する2つの特性を両立

 クルマをながめ、ひと通り舐めまわすように観察していると、そこには「YARIS」のエンブレムがあった。これは、新型ヤリスのプロトタイプである。先代までの日本名はヴィッツ。それが欧州で高い知名度を誇るヤリスとなって日本投入される。日本発売は2020年の2月10日とアナウンスされている。

 新型ヤリスは、たたずむその姿からして誰もの視線を惹き寄せる。ボディはコンパクトなのに、凝縮感が強い。中身がギュッと詰まっている様子が伝わってくる。

 選択可能なエンジンは、直列3気筒の1リッターと1.5リッター、そして1.5リッターハイブリッドの3部構成である。ハイブリッドモデルには、このクラスでは異例のE-four(4WD)もラインナップするという豪華さだ。

 エポックなのは、プラットフォームを新開発したTNGAに改めていることだ。エンジンを低く搭載し、タイヤを四隅に配置することができるプラットフォームは、走りの性能を高めることに貢献する。人体の骨格同様に、これであらかたの基本性能が決まる。

 トヨタがTNGAと呼ぶそれは、骨組みの中の低い位置にエンジンが収まるように設計されている。しかもそのエンジンは、重心点に寄せて積みやすいように細工されている。サスペンションを構成するアームやヒンジの取り回しも、タイヤが四隅になるように設計されている。結果として、低重心であり、前後重量配分に優れ、スタンスの広いクルマができあがるというわけだ。

 TNGAの効果は絶大で、基本構成が優秀だから、サスペンションをいたずらに硬めなくてもハンドリングが安定するというメリットを生む。サスペンションが硬くないから、走りがいいのに乗り心地が悪くならない。

 これまでは、スポーツ性能と乗り心地は背を向けていがみ合うような相反する特性だとされてきた。長年のその常識を覆すかのような完成度なのである。

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