オーダーブックで読み解く外為市場

米国の景気減速懸念でドルの上値圧迫も 雇用統計やISM景況指数にも要注意 (1/2ページ)

 先週の為替市場は、欧米を中心とした新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速への警戒感の強い状態が続いたものの、株式市場が反発に転じたことや米連邦準備制度理事会(FRB)の追加緩和が意識されたことにより、先週まで続いた米ドル高の流れから一転し、米ドルが売られる展開となりました。

 為替市場においては、一般的に市場のリスク許容度が低下する局面では、安全資産とされる円やスイスフランが強くなり、次いで米ドルが強くなる傾向がありますが、今回のケースでは、今のところ、株式市場が下落するような局面では、資産の現金化に伴うドル需要を中心に米ドルの強さが目立つ状態が続いており、再び新型コロナウイルスによる悪影響が意識される場面では、米ドルが強くなる可能性が考えられそうです。

 今週は引き続き新型コロナウイルスの感染拡大に関する報道が話題の中心となるほか、米国では3月の雇用統計やISM景況指数の発表が予定されており、結果に注目が集まります。

 今回の雇用統計では、まだコロナウイルスの感染拡大の影響は限定的かもしれませんが、いずれ先週発表された新規失業保険申請件数のように大きな影響が出てくることが想定されます。このため、今回の結果での影響が軽微であったとしても米ドルの上値余地は限定的となるかもしれません。

 また、ISM景況指数も好不況の分岐点となる50を割り込むことは避けられないと考えられ、米国の景気減速、追加緩和が意識されると、米ドルの上値圧迫材料となりそうです。

 さらなる下落余地あり

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、序盤に伸び悩む動きが続いた後、1米ドル=107円台まで下落する展開となりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、直近の下落により、含み損を抱えた買いポジションが増加しており、安値を切り下げる動きとなると、これらの買いポジション保有者の損切り(損失の拡大を防ぐための決済取引)の売りが増え、下落が勢いづく可能性が考えられるため、下落余地は十分に残されているように見えます。

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