ヘルスケア

PCR検査の拡充鈍い日本 ニーズ急増、医療態勢維持しつつ強化急ぐ

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、感染の有無を調べる「PCR検査」の態勢拡充が大きな課題となっている。感染に関する相談件数に対する検査の実施件数が少ない上、医師が必要と判断しても検査されないケースも指摘される。政府は「医療崩壊」を防ぐため希望者全員に検査を行う考えはないが、諸外国より検査件数が少ないとの批判も念頭に態勢強化を進める。(中村智隆)

 都市部は相談に実施が追いつかず

 「東京都を含め、全相談件数に占める検査実施の報告件数が低い都道府県については、背景や事情を改めてフォローアップする」

 安倍晋三首相は2日の衆院本会議でこう述べ、都道府県で検査の必要性が適切に判断されているかどうか調べる考えを示した。

 厚生労働省がまとめた2月1日~3月30日の帰国者・接触者相談センターへの相談件数と検査実施件数では、例えば東京都は相談が3万8629件で検査実施は2・2%の859件。茨城県は相談379件で実施363件と95・8%に上り、大きな差が出ている。

 感染者が急増している都市部などで、相談件数の増加に診察や検査が追いついていない可能性があり、政府は実態把握を急ぐ。

 「ドライブスルー」採用は…

 検査をめぐっては、政府は1日最大1万件以上の態勢を整えたとするが、3月の平均実施件数はわずか1584件。同月末にようやく3千件を超え始めたに過ぎず、4月1日の件数は3604件だった。医師が必要と判断しているにもかかわらず「実際には保健所で断られている例がたくさんある」(自民党厚労族議員)という。3月上旬には検査の保険適用も始まったが、検査件数の大きな伸びにはつながっていない。

 日本医師会の横倉義武会長は3日、首相と会い、「必要な人には検査を受けられるようにしてほしい。国の中の状況を把握することが大事だ」と注文を付けた。横倉氏は検査が実施可能な新型コロナウイルス感染症の相談外来を公設すべきだと考えており、「検査ができない原因に個人防護服不足がある」とも語る。

 こうした中、検査について車に乗ったまま喉の粘液などを採取する「ドライブスルー方式」の採用を求める声もある。一般の医療機関だと、感染の疑いのある患者と他の患者を動線や診療時間帯で分けなければならないが、この方式はその必要がなく、検査を効率的に行うことができる。新潟市などが採用している。

 加藤勝信厚生労働相は参院予算委員会で「わが国で否定されているわけではない」と答弁しており、感染者の急増に伴い濃厚接触者が大幅に増える中、今後普及する可能性はある。

 「医師が必要と判断した人に検査」

 ただ、政府は検査態勢の拡充を進める考えではあるものの、むやみに検査の網を広げる考えはない。不安解消のために希望者全員が検査を受けてしまうと医療機関がパンクする上、感染の温床となる危険性があるからだ。

 厚労省幹部は「あくまでも医師が必要と判断した人が確実に検査を受けられることが大事だ」と話す。政府専門家会議の副座長を務める地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は「必要な人が検査を早く受けられ、重症化を防ぐことが重要だ。改善の余地はある」として、今の方針のまま態勢を強化すべきだと説く。

 3日に行われた超党派の医師の国会議員による会合では「検査は偽陽性が出るなど完全ではないことを理解してもらう必要がある」との声が上がった。2日の自民厚労族の会合でも「医療態勢を守らなければならない」との意見が相次いだ。感染者の急増で検査ニーズが高まる中、政府はこれまで以上に検査の充実と医療崩壊阻止の両立に神経をとがらせることになる。

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