ヘルスケア

感染の全体像つかむ抗体検査 外出自粛の科学的根拠に

 新型コロナウイルスの感染拡大が収束傾向にある中、流行の第2波に備え、感染歴を調べる「抗体検査」に注目が集まっている。PCR検査や抗原検査では困難だった国内の感染実態を把握できるため、次の流行時に想定される感染者数を割り出し、外出自粛など行動制限の判断に生かせると期待される。ただ、検査精度や免疫獲得効果の国際的な評価も定まっていないなど、課題も残る。

 「過去の感染歴」を見る

 PCR検査や抗原検査が体内にウイルスが存在するかを調べ、その時点での感染の有無を診断するのに対し、抗体検査はウイルス感染から一定期間後に体内にできるタンパク質(抗体)を測定することで、過去の感染歴を見極める。個々の感染の有無より感染の全体像が分かるのが特徴だ。

 これまではPCR検査の能力に限界があったほか、軽症や無症状の感染者で無自覚のうちに回復した人も多いとみられ、国内の感染実態を正確につかめていないとされる。4月までに実施された複数の抗体検査の結果からは、公表されている累積感染者の数十倍から数百倍の感染者がいるとの推計も出ている。

 東京大の研究チームが今月初旬に都内の医療機関を受診した500人の血液を調べたところ、3人(0・6%)から抗体を発見。単純計算では約1400万人の都民のうち約8万人が感染していたことになり、判明している約5千人の累積感染者の16倍に上る。

 1万人対象の検査へ

 抗体検査で感染実態を正確に把握できれば、再流行した際に感染者数などの試算が可能だ。同チームは6月にも同規模の検査を行う予定で、児玉龍彦名誉教授は「もう少し方向性が見えてくる」と期待を込める。

 一方、西武学園医学技術専門学校東京校校長で医学博士の中原英臣氏は「抗体保有率が低ければ、流行の第2波、第3波が起こりうる」と強調する。

 厚生労働省が6月初旬から始める約1万人対象の抗体検査では、人口当たりの感染者数が多い地域(東京都、大阪府)と少ない地域(宮城県)の感染状況を比較する狙いがある。

 結果は、再流行時に外出自粛などの行動制限で地域ごとに強弱をつける科学的根拠になる。ワクチンが開発された場合、集団免疫の獲得までに接種が必要な人数の試算にも役立つ。

 検査精度には課題

 ただ、厚労省が行った検査キットの性能試験では、実際には感染していないのに陽性と出る「偽陽性」が疑われる事例が複数判明。検査精度には課題が残る。また、世界保健機関(WHO)が再感染の可能性を指摘するなど免疫力についても不確実な部分が多い。

 政府の専門家会議メンバーの一人は「抗体がどのように作られ、感染防御に働くのか。抗体量が正確に分かれば、より正しい評価ができるだろう」と話す。

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