クルマ三昧

BMWのエンブレムは「プロペラに青空と白い雲」がモチーフではなかった (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 受け継いできたからこその逸話

 「長い間、我々は『BMWのエンブレムの起源がプロペラである』と言われていることについて、それを正す努力をしてこなかったからではないでしょうか(笑)」

 それも納得する。我々はこれまでずっと、BMWのエンブレムが航空機エンジンメーカーであることの誇りであり、それを誇示するためのイメージだと伝え聞いてきた。そして高速で回転するプロペラの残像に描かれる青い空と白い雲が、BMWの爽やかなイメージと合致していたことで、信じて疑わずにきたのだ。BMWはそれを知っているのに、訂正せずにきた。だがその定説は間違いだったのである。

 それを裏付ける証拠がある。BMWのロゴの決定したのが1917年の10月5日。飛行機のプロペラにBMWのロゴが浮かび上がる広告が制作されたのが1929年である。ジェイコブス氏の言葉が信用できるのである。

 ちなみに、BMWのロゴは左上が青で、右上が白になっている。青はドイツ語で「Blau」、白はドイツ語で「Weiss」である。Bの下が青を意味する「Blau」であり、Wの下が白を意味する「Weiss」なのである。

 デザイナーがわざわざそうしたのか、まったくの偶然なのかは分からないのだそうだ。ともあれ、エンブレムには伝統があり伝説がある。長い間モチーフを変えることなくエンブレムを受け継いできたからこその逸話だ。ブランドの神話はそうして作られる。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus