IT風土記

浜松市・岡山市・相模原市発 変わる自治体の窓口 外国人の待ち時間解消へICTで実証実験 (1/2ページ)

 人口減少による人手不足が深刻になる中、日本は外国人労働者の受け入れ拡大を進めている。2019年6月時点の日本国内の在留外国人数は282万9416人と過去最高になった。在留外国人が増える中、ITで転入や転出といった自治体窓口の混雑を緩和し、効率化を図ろうという取り組みが始まっている。浜松、岡山、相模原の3市は2019年、窓口業務の現状把握を目的とした業務分析と、ICTを活用して窓口での効率化を目的とした実証実験を行った。プロジェクトの成果や、見えてきた課題について3市に話をきいた。

 繁忙期は2時間待ちも

 人口約80万人の浜松市は、楽器や自動車メーカーなどの本社が所在し、製造業に従事する人が多い。工場で働く外国人労働者など在留外国人も多く、19年10月1日現在、同市の外国人住民数は2万5275人。国籍別ではブラジル国籍が最も多く、外国人住民数のうち約4割を占める。次いでフィリピン、ベトナム国籍が続く。

 「外国には日本特有の『世帯』や『続柄』といった概念がなく、どういうものかを説明するのにとても時間がかかっていた」。こう話すのは、浜松市中区区民生活課の山下巧課長補佐だ。浜松市は行政手続きのワンストップサービスを行っている。転入や転出届の手続きなどで区役所を訪れた人が、国民健康保険の加入や脱退、転入学の手続きも一つの場所で完結できるサービスだ。窓口には外国語に堪能な職員も常駐するが、転出手続きが増える春の繁忙期には、2時間近い待ち時間が発生していたという。

 同市企画調整部情報政策課の河島正志課長補佐は「市民のニーズが多様化する中で、窓口業務の効率化を進める必要があると感じていた」と明かす。ICTの活用を探る中、同市は総務省の「自治体行政スマートプロジェクト及び革新的ビッグデータ処理技術導入推進事業(都道府県補完モデル事業)」を受託した。この事業は、AIやRPAなどのICTの導入が有効とされる自治体業務を検証すること、どの自治体でも導入できるように業務プロセスを標準化することを目的にしている。浜松市は、同じ政令指定都市で、人口に占める在留外国人比率が比較的高い岡山市と相模原市に呼び掛け、3市共同のプロジェクトが実現した。

 窓口業務のボトルネックを洗い出す

 3市は19年7月にプロジェクトをスタートし、実証実験の事前準備として、窓口業務の現状と課題を洗い出す作業を行った。また、実際の窓口業務にかかる時間も計測した。岡山市、相模原市が窓口業務で抱える課題を担当者に聞いた。岡山市政策局行政改革推進室の藤原紀恵課長補佐は「外国人技能実習生の場合は、勤務先の会社の方たちと十数人で来庁するケースが多い。日本語を勉強してきているので意思疎通は図れるが、人数が多いため、時間と人手がかかっている」と説明する。

 相模原市はどうか。同市は、来庁した市民に対して1人の職員が、転入・転出や戸籍の届け出などの申請のほか、児童手当や国民保険などの手続きをすべて応対する「スーパーマン型ワンストップ窓口」を設置している。相模原市緑区役所区民課の藤田信子課長は「『スーパーマン型』は市民にとって利便性が高い一方、職員の専門性が非常に高いため代替がきかず、負担がかかってしまう傾向がある」と話す。同市緑区役所では、9人体制で窓口業務を行っているが、繁忙期の待ち時間は、最大1時間半に及ぶという。

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