クルマ三昧

リモート観戦なら弊害は少ない? モータースポーツ界始動、待ち遠しい開幕戦 (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 伝統的な「ル・マン24時間耐久レース」や「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」といった年に一度の祭典は、例年の春開催を見送り、秋に延期となった。だが、規模が大きいということもあり、果たしてどれほどのチームが現地にたどり着くことができるのかは未知数である。

 僕が昨年参戦していた「ワールドチャレンジGTアジアレース」は、日本やタイや、あるいは韓国転戦型であったが、今年はマレーシアと中国だけに縮小しての開催が発表されている。いずれにせよアジア圏に限られており、世界転戦ほど移動距離は遠くはない。とはいうものの、検閲や機材運搬など、主催団体の頭が痛いところだ。

 無観客レースでの弊害は少ない

 サーキットは屋内イベントではないこともあり、策を講じれば安全が担保されるのではないかと楽観的な意見も少なくない。そもそも肉体と肉体のコンタクトスポーツではなく、マシンに乗るのは一人ということから、競技中のソーシャル・ディスタンスも確保しやすい。サーキットは基本的に遠隔地にある。観客席も広大であるから、間隔を開けての観客収容も無理難題ではなさそうだ。

 無観客レースとはいえ、ネット配信しやすいという事情もある。もともと、レース中のコクピットの映像システムは充実している。戦うドライバー目線の映像をライブで配信することはすでに続けてきた。ラップタイムやマシンのコンディションなど、観戦をより演出する情報の公開は進んでいる。サーキットでなければ味わえない感動は現地に足を運んでこその魅力だが、自宅のモニターでの観戦も楽しめるように、すでに施策が行き届いている。リモート観戦による無観客レースでの弊害は少ないように思えるのだ。ともあれ、レーススケジュールが発表されたことは喜ばしい。遅れてきた開幕戦が今から待ち遠しい。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。

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