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“逃げ恥”から“デスノート”まで…ロケの聖地が解体へ 消える昭和の店 (1/2ページ)

 ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)、映画「舟を編む」など、数々のドラマや映画、CMのロケで使われた東京都千代田区神田神保町の大衆居酒屋「酔(よ)の助」が解体される。建物の老朽化に加え、4月全面施行の「改正健康増進法」で禁煙に対応しなければならなかったこと、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で営業自粛したことが決定打となった。“ロケの聖地”の閉店と前後して、「キッチン南海」「スヰートポーヅ」といった神保町の“昭和”も姿を消す。(道丸摩耶)

 あの芸能人と店の前で一服…

 周辺には多くの大学や専門学校。世界一ともいわれる数の古書店が狭いエリアに集まる神田神保町。「酔の助」は靖国通りから1本入った通り沿いに、昭和54年に開店した。

 テーブル席と、奥には座敷があり、壁には手書きの品書きがぎっしり貼られていた。明治大の学生として30年ほど前から訪れているという男性会社員(51)は、「座敷に上がってよく飲んだ。『畳に吐いたグループは罰金3万円』という紙がいたる所に貼ってあり、酔いつぶれた友人をトイレで何度介抱したことか」と振り返る。

 「昭和の大衆居酒屋」の雰囲気が愛され、15年ほど前からドラマや映画、CMの撮影に使われるようになった。平成27年のドラマ「デスノート」(日本テレビ)では窪田正孝さんが演じる主人公、夜神月のアルバイト先に。28年の「逃げるは恥だが役に立つ」では星野源さん演じる主人公が同僚と飲みに行く居酒屋となった。店主の一山文明さん(66)によると、昨年だけで約50回の撮影が行われたという。

 各地の酒場を紹介する「吉田類の酒場放浪記」(BS-TBS)などの番組で取り上げられると、一気に客が増えた。松本潤さんや安田章大さんらジャニーズ事務所のタレントの出演作放送後には、「聖地巡礼」として女性ファンが来店するようになった。

 「店の軒先に灰皿代わりの一斗缶を置いていて、ロケの合間に一服するスタッフや出演者と盛り上がることもあったね。名前は言えないけれど、ある女優さんは2度目に撮影に来たときには禁煙していたなあ」。一山さんはなつかしそうに振り返る。

 ロケで有名になっただけではない。酒に合うつまみは昔から、独特で絶品だった。「たこ焼きのミートグラタン」「ガンダーラ古代岩塩のピザ」「若鶏の北京ダック風」。ガンダーラ? 北京ダック“風”? 有無を言わせぬネーミングも、食べればそのうまさに納得。300~500円で北京ダックが出てくるはずもなく、文句を言うヤボな客などいなかった。

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