オーダーブックで読み解く外為市場

WITHコロナの米金融政策に集まる視線 FRB議長講演に反応も

 先週の為替相場は、米国債利回りの低下の影響もあり、前半は米ドルが軟調な推移となりましたが、後半にかけてはユーロ圏の8月の景況感を示す総合購買担当者指数(PMI)が弱い結果となったことをきっかけにユーロ売りが強まり、反動により米ドルの買い戻しが強まる展開となりました。

 引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大、米中関係悪化などのリスク要因が燻る中、今週は米国のカンザスシティー連邦準備銀行が毎年、ワイオミング州ジャクソンホールで開いている経済シンポジウムをオンラインで開催する。シンポジウムではパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演。米国の今後の金融政策に関する手がかりが出てくると、米ドルを中心に大きく反応する可能性があるため、注意が必要です。

 このほか、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う通商交渉に関して、少し雲行きが怪しくなっており、最新の報道にポンドを中心とした欧州通貨が過敏に反応する可能性が考えられそうです。

 ドル円は均衡がいずれに崩れるかに注目

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、下押しが強まり、1米ドル=105.10円付近まで下落後、105円台を中心に揉み合う動きが続きました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が引き続き6割を超える中、直近の価格レンジとなる1米ドル=105.10~106.20円付近のレンジで構築されたポジションが売買双方で多く、このレンジをしっかりと抜けるような動きとなると、苦しくなったいずれかのポジションの損切り注文(損失拡大を防ぐための決済注文)が増え、抜けた方に価格が勢いづく可能性が考えられそうです。

 ユーロドルは下押しが続く可能性にも要注意

 先週のユーロドルは、序盤は底堅い推移となりましたが、その後は上値が重く、一時1ユーロ=1.18米ドルを割り込む水準まで下落する動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、高値圏で推移していることもあり、含み損を抱えた売りポジションが多く、下押した場合は安堵の買い戻しが増え、高値を切り上げる場合は損切りの買いが増え、底堅い推移が続く可能性が考えられそうです。

 ただし、直近の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションも増えており、安値を切り下げる動きとなると、これらの買いポジションの損切りの売りを絡めた下落圧力にも注意が必要となりそうです。

 ポンドドルは買いポジションの損切りにも要注意

 先週のポンドドルは1ポンド=1.306~1.327米ドルの価格レンジで、上下動が続きました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、上昇基調が続いたことにより、含み損を抱えた売りポジションが多く、底堅い推移が続く可能性も考えられますが、直近の下押しにより含み損を抱えた買いポジションが目立つ状況となっており、安値を切り下げる動きとなると、これらの買いポジションの損切りの売りが増え、下落を後押しする可能性に注意が必要となりそうです。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

OANDA Japan株式会社

第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

加入協会等:一般社団法人 金融先物取引業協会 証券業協会 日本投資者保護基金

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら

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