オーダーブックで読み解く外為市場

首相辞任表明で日本株売り、円買い強まる ドル安地合いは続くか

 先週の為替相場は、新型コロナウイルス用のワクチン、新薬開発や米中関係改善への期待感等により米国株式市場が連日高値を切り上げる動きが続いたこともあり、円、次いで米ドルといった安全資産が弱い推移となりました。

 また、注目されたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演で、一時的にインフレ率が2%を上回ることを容認することが示されたことを受けて、米金利が上昇し、ドル買いが強まる場面もありましたが、影響は限定的で、円、米ドルが弱い相場が続きました。

 その後、週末には安倍晋三首相が辞任を表明したことを受けて、日本株売り、円買いが強まったため、主要通貨の中では、週間を通して米ドルが一番弱い通貨となりました。

 今週は米国で8月の雇用統計、ISM製造業、非製造業景況指数の発表が予定されています。新型コロナウイルスのウイルス用のワクチン、新薬への期待が高まる中、米国経済に回復の兆しが見られるかに注目が集まります。

 底堅い結果が続くと米ドルの下支え材料となるのに対し、期待外れの結果となると、高値圏での推移が続く株式市場の利益確定のタイミングと重なり、リスク回避色の強い相場となる可能性も考えられそうです。

 ドル円はさらなる下落余地あり

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、一時1米ドル=107.00円に迫る動きとなりましたが、安倍首相が辞意を表明との報道を受けて急落する動きとなり、1米ドル=105円台前半まで下落する動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が引き続き6割を超える中、そのほとんどが含み損を抱えており、反発したところでは安堵の利益確定の売り注文が上値を圧迫、また、安値を切り下げる動きとなると、損切り(損失拡大を防ぐための決済注文)の売り注文が増え、下落が勢いづく可能性が考えられ、下落余地はまだ残されているように見えます。

 ユーロドルは高値を切り上げるかに注目

 先週のユーロドルは、方向感が鈍い動きが続きましたが、週末にはジワリと上昇し、1ユーロ=1.19米ドル台を回復する動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、高値圏で推移していることもあり、売りポジションの比率が6割程度の中、そのほとんどが含み損を抱えており、下押した場合は安堵の買い戻しが増え、底堅さを見せる可能性が考えられそうです。

 一方で、直近の高値水準である1ユーロ=1.1965米ドル付近を上抜けると、含み損を抱えた売りポジションが苦しくなり、損切りの買いが増え、上昇を後押しする可能性も考えられそうです。

 ポンドドルは底堅い推移が続く可能性

 先週のポンドドルは1ポンド=1.306米ドル付近の水準で踏ん張り、反発に転じると、1ポンド=1.327米ドル付近の高値水準を上抜け、上昇が勢いづく展開となりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションに傾き、そのほとんどが含み損を抱えており、下押した水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、上昇を後押しすることが想定され、底堅い推移が続く可能性を見いだすことができそうです。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

OANDA Japan株式会社

第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

加入協会等:一般社団法人 金融先物取引業協会 証券業協会 日本投資者保護基金

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら

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