オーダーブックで読み解く外為市場

「ユーロ高懸念」の欧州中銀はどう出るか ラガルド総裁会見に大きく反応も

 先週の為替相場は、序盤は引き続き米ドルが弱い推移となりましたが、欧州中央銀行(ECB)の専務理事がユーロ高を懸念しているとの報道により、ユーロ売りが強まったほか、高値圏での推移が続いた米国株の下落によるリスク回避の米ドル買い等により、週間を通して、米ドルが強い推移となりました。

 今週は、ECBの金融政策を決定するECB理事会が予定されています。今回の会合では現在の金融政策を維持するとの予想が中心となっていますが、ECBスタッフによる経済見通しやラガルドECB総裁の記者会見等により、今後の金融政策の手がかりが出てくると、ユーロを中心に過敏に反応する可能性があるため、注意が必要です。

 このほか、先週末にかけて軟調な推移となった米国株式市場の動向にも注意したいです。今のところ、FX市場では、米国株式市場の下落は米ドル買いで反応していますが、この流れが続くかにも注目したいところです。

 また、来週には米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が予定されており、徐々にFX市場でも様子見ムードが強まる可能性が考えられそうです。

 ドル円は均衡が上下いずれに崩れるかに注目

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、反発地合いが続き、1米ドル=106.55円付近まで上昇しましたが、上値の重さも残り、106円台前半で鈍い動きが続きました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が引き続き6割を超える中、先週後半の価格レンジとなる1米ドル=106.00~106.55円付近で構築されたポジションが多く、この価格レンジを抜けるような動きとなると、苦しくなった売買のいずれかのポジションの、損切り注文(損失拡大を防ぐための決済注文)が増え、抜けた方への動きが強まる可能性が考えられそうです。

 ユーロドルは流れが変わる可能性も

 先週のユーロドルは、一時1ユーロ=1.2米ドル台に乗せましたが、その後は上値が重く、押し戻される動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、上昇基調が続いているため、含み損を抱えた売りポジションが依然として多く、下押した水準では安堵の買い戻しが増えそうですが、直近の下押しで含み損を抱えた買いポジションも増えており、下押しが続くとこれらのポジションの損切りの売りが増える可能性にも注意が必要となりそうです。

 上昇の勢いが和らいでいる点を考えると、今週のユーロドルは、流れが変わる可能性も視野に入れながら、方向感を探っていきたいところです。

 ポンドドルは踏ん張れるかに注目

 先週のポンドドルは1ポンド=1.348米ドル付近まで上昇後、失速する動きとなりました。ただし、週末には買い戻しが強まり、下落基調に一服感が出ているようにも見え、ここで踏ん張れるかどうかに注目したいところです。

 OANDAのオープンポジションを見ると、上昇基調が続いていたこともあり、含み損を抱えた売りポジションが依然として多く、下押した水準では安堵の買いが入り、底堅さを見せる可能性が考えられますが、直近の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションも増えており、下押しが続くと、これらの買いポジションの損切りの売りが増える可能性にも注意が必要となりそうです。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

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OANDA Japan株式会社

第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

加入協会等:一般社団法人 金融先物取引業協会 証券業協会 日本投資者保護基金

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら

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