宇宙開発のボラティリティ

JAXA「こうのとり」後継機が月へ行く 大幅に進化した新型補給機 (2/2ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

 米国の「シグナス」が3.75トン、「ドラゴン」が3.3トン、ロシアの「プログレス」が2.53トンなのに対し、HTV-Xは5.82トンと、圧倒的な搭載量を誇ります。HTV-Xと同様、2021年の初打ち上げが予定されている「ドリーム・チェイサー」は再利用型の無人補給機ですが、こちらも積載量においては5.5トンとHTV-Xにはおよびません。

ISS内では不可能な燃焼実験や、菌類などの実験も

 既存の補給機はISSへの物資輸送が完了すると、不要なモノが積み込まれ、大気圏に再突入して燃え尽きます。しかし、HTV-Xはステーションから分離してから再突入するまでの間に、小型衛星の放出、ソーラーパネルやアンテナなど大型構造物の展開、低軌道での地球観測や、大気密度の濃い環境での実験にも活用される予定です。また、ステーション内では不可能な燃焼実験、菌類や有毒薬品を使用した実験なども検討されていています。

 HTV-Xは 2021年度に初めて打ち上げられると、まずはISSに向けて運用されますが、1号機では大型機器の搭載能力、電源や通信の提供、飛行能力などの実証実験が行われ、2号機では自動ドッキング技術などがテストされます。こうのとりの場合は、ISSへ10mまで自動航行で近づくと、あとは人によるロボットアーム操作で捕獲されていましたが、HTV-Xでは、ドッキングに関するすべての行程が自動化されます。こうした機能の拡張や積載能力の増大によって、HTV-Xにおける運用コストは大幅にダウンすると考えられます。

HTV-Xを上げるH-3ロケット、全長は山手線3車両分

 このHTV-Xを打ち上げるのが、JAXAと三菱重工業が開発中の液体燃料二段式ロケット「H-3」です。この全長67mの大型ロケットは、国産ロケットとしては過去最大の打ち上げ能力を誇ります。当初は2020年度中の初打ち上げが予定されていましたが、第一段に搭載される新型エンジンLE-9の開発に遅れが生じたため、2021年度中の初打ち上げに変更されています。

補給機の運用がいかに難しいかを体感

 JAXAは宇宙補給機の運用の難しさを体験できるゲーム「HTV GO!(β版)」を公開しています。これは「こうのとり」を研究開発したスタッフが作成したゲームとのこと。ロケットによって低い軌道に投入される補給機は、ISSが周回する軌道まで高度を上げ、後方からアプローチしますが、ウェブブラウザ上でその行程を体感し、理解することが可能となっています。

【宇宙船(こうのとり)運用体験ゲーム】

  • ▼PC版はこちら(通信量:約64MB) 
  • ▼スマホ・タブレット版はこちら(通信量:約53MB)
  • ※Wi-Fi接続可能な環境推奨
エイ出版社の現役編集長。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍をプロデュースしつつ自らも執筆。趣味は人工衛星観測。これまで手掛けた出版物に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。

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