クルマ三昧

日産復活の狼煙は意表を突くレトロモダン 次期「Z」に込められた狙いとは (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 コクピットも例外ではない。デジタルや液晶を使ってはいるものの、フェアレディZ伝統の3眼メーターや、キリリとたちおとしたインパネなどは、かつてのフェアレディZそのものだ。

 パワーユニットも同様で、V型6気筒ツインターボユニットを搭載。6速マニュアルミッションと組み合わされる。限られた資料にオートマチックの文言はない。まさか現代においてオートマチック仕様の設定がないとは思えないが、それほど割り切っているのだ。

 歴代のS30型、S130型、Z31型、Z32型、Z33型、そして現行のZ34型すべてのエッセンスを取り入れている。全身全霊、どこから眺めてもフェアレディZであることがわかる。

 新生日産を宣言

 日産は矢継ぎ早にニューモデルを投入すると宣言した。それはつまり、負の遺産を精算し、新しく生まれ変わるのだと口にしたわけだ。だが姿を現したフェアレディZは、過去へのオマージュである。驚きはそこにある。

 ただそれも極めて頼もしい戦略に満ち溢れている。近未来的な先進である「アリア」を発表、かえす刀でレトロモダンな「フェアレディZ」をお披露目した。それすなわち、これまで愛されてきた日産アイデンティティを失わずに、技術の日産が力強い歩みで前に進むことの宣言なのだ。日本人にとって伝統的な自動車メーカーであり日産の浮沈は興味のあるところだ。それが炎上するほどに話題になった証拠だろう。日産復活の狼煙は、意表を突くレトロモダンだった。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。

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