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日本人が14年連続受賞のイグ・ノーベル賞の魅力 奥深い知的な笑いと皮肉

 「ホッキョクグマに変装した人間に対するトナカイの反応」「インドとパキスタンの外交官が互いにピンポンダッシュをしたらどうなるか」-。人々を笑わせ、考えさせられる研究や業績を残した人に贈られるイグ・ノーベル賞。偉大な研究・発見に贈られる“本家”のノーベル賞では今年、残念ながら日本人の受賞者はいなかったが、その裏でイグ・ノーベル賞は今年も京都大の准教授が栄誉に輝くなど、14年連続で日本人が受賞している。なぜなのか。(橘川玲奈)

 ワニの声も…

 今年、イグ・ノーベル賞の音響学賞を受賞したのは京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の西村剛准教授(45)=生物音響学。オーストリアの研究者らと共同で中国原産のヨウスコウワニにヘリウムガスを吸わせて鳴き声の周波数を測定する実験を行い、声が変化することを確認。人間や鳥類などのように、ワニも空気の共鳴によって発声していると結論づけた。

 「何のための研究なのか」といぶかしくなるが、研究結果からは、鳥類やワニの共通の祖先である恐竜もかつて共鳴によって「声」を出していた可能性が浮かび上がるという。西村氏は「おもしろい研究は、本当は山のように多くある。こうやってスポットライトが当たったのはうれしい」と喜びを語った。

 ユーモアや皮肉に

 ノーベル賞の「ノーベル」に否定を表す接頭語「イグ」をつけたイグ・ノーベル賞は1991年、米国のサイエンス・ユーモア雑誌が創設。人々を笑わせ、考えさせる業績を行った研究者や団体などに贈られている。

 受賞した研究・業績は当然、ユニークなものが多いが、2013年には「公共の場で拍手喝采を禁止したベラルーシの大統領と、片腕の人も拍手の罪で逮捕した同国の警察」に平和賞、15年には「賄賂を受け取らなかった警察官にボーナスを与えたタイの警察」に経済学賞がそれぞれ贈られるなど、社会問題を皮肉を利かせた「笑い」でとらえたものもある。

 授賞式は通常、米ハーバード大で行われるが、今年は新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインで実施された。受賞者による難解な研究内容のスピーチが行われるノーベル賞に対し、イグ・ノーベル賞では受賞スピーチは1分以内、かつおもしろく行われなければならない、という決まりもある。

 日本人は常連

 日本は、外国との共同受賞を含めると14年連続、これまでに計26回もイグ・ノーベル賞を受賞している「常連」だ。初受賞となったのは1992年の医学賞。資生堂の研究者らが、足の臭いの原因となる化学物質を突き止めた。

 平和賞を受賞したこともある。2002年、タカラ(現・タカラトミー)などが犬の鳴き声を人間の言葉に“翻訳”する機械「バウリンガル」を開発。愛犬と人間との相互理解を深め、「さらなる平和を築いた」と評価された。

 昨年には、明海大保健医療学部(千葉県浦安市)の渡部茂教授らが、典型的な5歳の子供の唾液分泌量を1日約500ミリリットルと推計し、化学賞を受賞した。35年ほど前、唾液の分泌量の計測に協力した渡部教授の息子3人も受賞スピーチに登壇。500ミリリットルのペットボトルを掲げると、会場から笑いが起きた。

 それにしても、なぜ日本人の受賞者が多いのか。創設者の1人、マーク・エイブラハム氏によると、日本は人口あたりのイグ・ノーベル賞受賞者が英国と並んで多い有数の輩出国。同氏は18年に来日した際に「日本は、変わった人が変わったことをすると、『その人を生んだのはこの土地だ』と喜ぶ風土がある」と話し、“変人”に寛容な土地柄が独創的な研究に結びついているとの「分析」を披露している。

 「『なるほどな』と、くすりと笑える、知の本質がある」。05年に「34年以上、食事の写真を撮り、体調を分析した」として栄養学賞を受賞した発明家のドクター・中松さん(92)は、イグ・ノーベル賞の魅力について、こう表現する。

 今後の受賞者となりうる日本の研究者らに対し、中松さんは「知的におもしろい、ということを研究の軸にしてほしい」とエールを送った。

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