ヘルスケア

iPSがん治療、国内初の移植実施 千葉大など免疫細胞利用

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した「NK(ナチュラルキラー)T細胞」という免疫細胞をがん患者に移植する世界初の治験について、千葉大と理化学研究所の研究チームが移植手術を実施したことが21日、分かった。手術は成功したという。iPS細胞を使った再生医療の研究でがん患者に移植手術を行ったのは国内で初めて。

 移植手術は口やのどなどの「頭頸部(とうけいぶ)」にがんができ、抗がん剤などの効果がない患者に14日、千葉大付属病院で実施した。リンパ球の一種で、がん細胞を攻撃する働きを持つNKT細胞を健常者から採取しiPS細胞を作製。ここから再びNKT細胞を作って大量に培養し、患部に移植した。

 計3回移植し、安全性や有効性を2年間確かめる。本橋新一郎・千葉大教授は「安全性の確認を第一に進め、新しい治療法を早く患者に届けたい」と話した。

 頭頸部がんは鼻や口、のどなどにできるがんの総称で、国内患者は推定で数万人。NKT細胞を患者から採取して増やし、体内に戻す治療法もあるが、この細胞は体内にわずかしかなく増やすのに時間もかかる。iPS細胞を使えば十分な量で迅速に治療できる。

 NKT細胞はT細胞などに続く「第四のリンパ球」と呼ばれ、理研チームが昭和61年に発見した。多くの免疫細胞が司令塔役の細胞の指示で異物を攻撃するのに対し、指示なしで攻撃。他の免疫細胞を活発化させる働きも強く、高い治療効果が期待されている。

 千葉大などは今年5月、国の審査機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験の実施を届け出て認められていた。計4~18人に移植を予定している。

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