教育・子育て

男性に家事・育児への参加を呼びかけても全然効き目がない理由 (1/3ページ)

 深刻化する日本の人口の減少。その原因は、共働き世帯の子育てのしにくさがひとつと言えます。男性の育休取得の「義務化」を目指す小室淑恵さん・天野妙さんに、日本の男性育休の現状を教えてもらいます。

 ※本稿は、小室淑恵、天野妙『男性の育休』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

 母親を産後うつへと追い込んでしまう夜中の育児

 産後一年までに死亡した妊産婦の死因で最も多いのが「自殺」です(出産後の自殺九二人、次いでがん七五人、心疾患二八人、出血二三人。二〇一五~一六年)。その要因と言われているのが、「産後うつ」ですが、産後うつの発症リスクは、産後二週間~一カ月がピークです。うつを防ぐには「十分な睡眠をとれる」ことと「朝日を浴びて散歩」ができるような環境により、体内に「セロトニン」というホルモンを増やすことが重要ですが、この二つこそが、産後の女性にとっては一番難しいことです。二時間おきの授乳や夜泣き対応があり、赤ちゃんはしばらく外気にあてられないので、薄暗い部屋でたった一人、赤ちゃんが息をしているかどうかを確かめながら過ごす日々は、母親を産後うつや自殺へと追い込んでしまうのです。

 この時期に、まずはたった二週間から一カ月でもいいですから、夫が育休を取って夜中の育児を一緒に支えて、妻が休める時間を作ることで、妻の命を救うことになるのです。

 私自身も二〇〇六年に長男を出産した際、夫の平均帰宅時間は深夜二時で、ともに両親が遠方に住んでいたため本当に追い込まれてしまいました。子どもが泣き出すと「このまま腕の中で死んでしまうのではないか。そうなったら、全て自分の責任なんだ」と、一緒に泣き続けたのを覚えています。今思えば、あの時は産後うつの入り口にいたわけです。そしてやっと深く寝てくれて、ベッドに赤ちゃんを置いた瞬間に、まるで見ていたかのようなタイミングで大きな物音を立てて帰ってきて赤ちゃんを起こしてしまう夫に「二度と帰ってこなくていいから!」と言って大喧嘩したものです。

 少子化対策には、企業への働きかけが急務

 実はこの第一子出産以降における夫の家事育児参画時間が、どうやら日本の少子化の根本要因であるということが、厚生労働省のデータで分かってきています。同じ夫婦を一一年間追跡調査してみると、第一子が生まれた際に、夫が休日に六時間以上の家事育児参画をしていた家庭では、なんとその後八割の家庭で第二子以降が誕生していたのです。夫の家事育児参画時間が少ないほど、第二子以降が生まれていないということなのです。

 孤独な子育てが妻のトラウマ体験になる国が、少子化になるのは当然とも言えるでしょう。第一子の孤独な育児で妻の自殺を招いてしまったり、夫婦の信頼関係が崩壊してしまったりすれば、第二子以降は生まれないのです。

 しかし、妻を孤独に追い込んだのは「夫の意志」ではないのです。妻の妊娠が分かり、育児に参画することを楽しみにしていた男性の多くが、職場に育休を打診すると「まさか育休なんか取るんじゃないだろうな」「取ったらどんな処遇になるか分かっているよな」という組織の壁に阻まれてきました。取引先や出向先の企業から「男に育休を取らせるような企業とは契約しないぞ」というような圧力を受けて断念させられたというケースもあります。そもそも言い出すことすら不可能な同調圧力の強い風土の企業もまだまだ多いのが現実です。ここが重要なポイントです。こうした企業の阻害が、結果的にこの国の少子化を招いたのですから、企業に対して政府が何らかのルールを設定しなければ、解決するはずがありません。にもかかわらず、政府の施策は、ずっと育児する本人たちの意識に働きかけるものにとどまってきたのです。

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