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“特殊な燃料電池車”から脱却 新型「ミライ」は日常に寄り添う高級セダンに (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

安心の航続距離

 水素で走る燃料電池車(FCV)「トヨタ・ミライ」がフルモデルチェンジして誕生した。2代目となる。FCVは、フューエル・セル・ビークルの略である。

 FCVタンクに蓄えた水素を大気中の酸素と反応させた電力をエネルギーとして走る。いわば、水を電気分解によって水素と酸素に分けるのと逆の方法で電気を取り出す。FCVは走行中、一切のCO2(二酸化炭素)を発生しない。クリーンエネルギー車の救世主として期待されているのだ。

 パワーユニットは電気自動車(EV)と同様に電気モーター駆動なのだが、自らが「走る発電所」として機能している。EVは充電に時間がかかるのに対し、FCVはガソリンスタンドで給油をするのと時間的には差がない。水素タンクを満タンにするのに費やす時間は3~5分である。EVの欠点を補っているのだ。

 ただし、その水素を充填できる「水素ステーション」がまず少ない。政府は助成金を投入し、水素ステーションの増設を進めているが、官民挙げての施策も効果が薄い。バスやトラックといった、あらかじめルートや航続距離が確定している商用車での普及は進んでいるものの、ミライの販売が思うほど伸びていないのは、水素ステーションの問題もある。

 政府はそれでも、FCV保有台数に対して水素ステーションの数は潤沢にあると公表している。確かに比率としては正しい。だが、FCVを脱炭素社会の救世主とするには、FCV普及のネックである水素ステーションを増設する必要がある。つまり、政府と市場はいたちごっこをしている。鶏が先か、卵が先かの迷宮にハマっているのだ。

 それを察してトヨタは、まずはミライの販売台数を伸ばす方向で開発を進めた。初代ミライが、いかにも特殊なFCV然としていたのに対し、新型ミライは街に自然と馴染む高級セダンを目指している。決して特殊なクルマではなく、日常に寄り添うことのできるものとした。

 前後に長く、低く幅広のボディはトヨタ・クラウンを上回るサイズであり、自然なスタイルが特徴である。新型ミライは先代のように異様に車高が高く、狭い乗り物ではなくなった。FCVには、巨大な水素タンクを搭載する必要がある。水素を充填できるステーションが少ないから、航続距離の長さが求められる。EVならば、200キロほどの航続距離でもは耐えられるが、FCVではそうはいかない。このため新型ミライは約850キロの航続距離を達成した。つまり、効率を飛躍的に高めたとはいうものの、それだけ大量の水素を搭載しているのであり、それが室内空間に侵食するのだが、それでも不満のないスペースを確保しているのだ。

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