新時代のマネー戦略

相続税対策で「一括贈与」、選択肢はそれだけ? ラッキーで済ませるな (2/3ページ)

鈴木暁子
鈴木暁子

 ただし留意点として、

  • (1)まとまったお金が動くので、将来税務署から問い合わせがある場合もあるその時に説明がつくように学費の納付書など教育資金に支出したことを証明する領収書などを取っておく
  • (2)都度贈与なので、あらかじめ将来発生分を見越して贈与すると贈与税がかかってしまう
  • (3)贈与する人(この場合であれば祖父母)が贈与した後3年以内に亡くなった場合は、相続財産に戻される

 などがあります。とはいえ一括贈与のような手続きも不要ですし、必要な時に必要な額を贈与するので合理的といえます。

相続税の心配をするなら長い目で考える

▼「都内に持ち家を保有していると、相続税がかりそうだから…」

 「都内の戸建てに住んでいるので、僕の試算では相続税がかかりそうだし、息子夫婦がマイホーム購入を検討しているので住宅資金を贈与しようかなと」と相談に来られた65歳男性(配偶者あり。既婚で賃貸の長男あり)。過去の税制改正で相続税の基礎控除が縮小されたことで、都内で戸建てを保有していると相続財産が基礎控除を超えるケースも増えています。そのため住宅資金の一括贈与の制度を使って子どもの援助をしつつ、相続財産を縮小しておこうと考える人も多くなっています。

 たしかに相続財産を縮小するために生前贈与を活用することも一案ですが、評価額が高い自宅を保有している方に有益な選択肢のひとつとなり得るのが「小規模宅地等の特例」。未だに知らない人も多いのではないでしょうか。

 被相続人(この場合であれば父)が自宅や事業地として使用していた宅地を相続によって取得する場合、一定の要件を満たせば、一定の面積まで、相続税評価額の計算にあたり最大80%減額される(例:5000万円の宅地の相続税評価額が1000万円として計算される)というものです。日本は持ち家志向も高く、資産に占める不動産の割合も高いため、その評価額が大幅に圧縮される可能性がある、メリットが大きい制度です。(国税庁HP「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

 ただし、それゆえに適用要件は非常に厳格です。(今回は被相続人が自宅として居住していたもの《特定居住用宅地等》についてのみ取り上げます)

【特定居住用宅地等の要件】

 今、この相談者(父)が亡くなった場合、配偶者(母)がいますから、配偶者が相続すれば当該特例は適用されます。しかし将来配偶者が亡くなった時はどうでしょう。その時点で別居している長男夫婦は取得者の要件(1)にも(2)にも該当せず(3)ということになるのですが、実は(3)の場合は細かい要件すべてを満たさないと適用されないのです。

 その一つに「相続開始前3年以内に取得者本人やその配偶者、取得者の3親等内の親族(おじ、おば等)が所有する家屋に居住したことがないこと」という要件があります。つまり長男夫婦がマイホームを所有し、母が亡くなった時にマイホームに居住していた場合には、小規模宅地等の特例は適用されず、宅地の評価額減額はありません。

 亡くなった方が自宅に使用していた宅地について、通常の評価額で相続税の計算をすると相続税は高額になります。その自宅に居住している家族が自宅を売却しないと相続税が払えないというのであれば生活基盤が維持できなくなってしまいますし、宅地を次世代に引き継ぐことが困難になります。

 そのため、「一定の要件を満たす宅地等については税の優遇措置を適用しよう。ただしすでにマイホームを持って暮らしているのであれば、そのような事情を汲む必要はないので適用なし」というのが、小規模宅地等の特例の趣旨です。上記要件のとおり、配偶者は同居、非同居にかかわらずこの特例の適用がありますが、それ以外の親族は同居しているかどうかが大きなポイントとなるのです。

 適用されない場合、宅地の評価額が高い、あるいは宅地のほか金融資産も多いなど相続財産評価額が基礎控除を超える可能性は大いにありますが、その際に相続税の負担が子どもにのしかかってくる可能性があるのです。

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