まさかの法的トラブル処方箋

男女共同参画と単独親権の矛盾 結婚が破綻…そこに潜む法律の“罠” その2 (2/2ページ)

上野晃
上野晃

共同親権を採用する海外

 日本以外の先進諸国では、離婚後単独親権制度を採用している国はほとんどありません。法務省が外務省を通じて行った、離婚後の親権制度や子の養育の在り方をめぐる24カ国調査結果で、共同親権を採用しているのは24カ国中22カ国であることが分かりました。ちなみに、単独親権制度を採用している2カ国はインドとトルコです。このように多くの先進国では共同親権制度を採用しているのですが、共同親権制度に進む大きなきっかけとなったのが、実は女性側の運動にあったと知ったら、皆さんは驚くでしょうか?

 1970年代当時、全米女性団体の会長だったカレン・デクローが、こんな有名な言葉を残しています。

 「もし離婚をするようなことがあるならば、共同親権とすることを強く勧めます。共同養育は男性や子供にとって公正なだけでなく、女性にとっても最善の選択です。女性の権利や責任に対するフェミニスト活動を、四半世紀以上も見つめてきた結果、私は、共同養育は女性にとって素晴らしいと結論づけます。それは教育・訓練・仕事・キャリア・専門・レジャーを求める女性親に時間と機会を与えるものです。男性を除外し、女性と子供だけが永遠の愛の絆の衣服で包まれているかのようなことを示す、科学的・論理的・合理的な根拠は一つとして存在しません。私たちのほとんどは、女性には男性ができることは全てできると認識しています。今、私たちも男性には女性ができることは全てできると認める時です」

 このデクローの言葉が、その後の米国での共同親権への移行に強い影響を与えたのです。

男女共同参画を唱えつつ単独親権に固執する矛盾

 男女共同参画-。少子化の下、慢性的に労働力が不足していく日本で、実現すべき必須の課題です。女性政治家やフェミニストの弁護士さんたちは、社会における男女共同参画の実現を強く求めています。しかし不思議なことに、共同親権の議論になると、こうした男女共同参画推進論者の方々から、慎重論が上がります。けれど、よく考えてみてください。21世紀の今、3組に1組が離婚するんですよ。世の中はシングルマザーであふれています。そして、そのシングルマザーの人たちが子育てに追われて仕事ができず、貧困が問題となっています。

 一方で国の財政は逼迫(ひっぱく)しています。だとしたら、解決法は?共同親権しかないじゃないですか。社会における男女共同参画を実現するためには、家庭における男女共同参画の実現が不可欠です。そして、それは離婚家庭も例外ではないのです。社会で男女共同参画を唱えながら、離婚後単独親権に固執する矛盾。そのことに、多くの人たちが早く気付かないと。いや、若い世代の人たちはすでに気づき始めています。

 なのに一向に制度や運用が改まらない。そうしている間にも日本はじりじりと衰退しています。急がなければなりません。

 次回、家庭裁判所が下した滑稽とも言える判断をいくつかご紹介するとともに、そうした判断が下される背景事情をより深く探ってみたいと思います。

神奈川県出身。早稲田大学卒。2007年に弁護士登録。弁護士法人日本橋さくら法律事務所代表弁護士。夫婦の別れを親子の別れとさせてはならないとの思いから離別親子の交流促進に取り組む。賃貸不動産オーナー対象のセミナー講師を務めるほか、共著に「離婚と面会交流」(金剛出版)、「弁護士からの提言債権法改正を考える」(第一法規)、監修として「いちばんわかりやすい相続・贈与の本」(成美堂出版)。那須塩原市子どもの権利委員会委員。

【まさかの法的トラブル処方箋】は急な遺産相続や不動産トラブル、片方の親がもう片方の親から子を引き離す子供の「連れ去り別居」など、誰の身にも起こり得る身近な問題を解決するにはどうしたらよいのか。法律のプロである弁護士が分かりやすく解説するコラムです。アーカイブはこちら

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