ヘルスケア

新型コロナ感染拡大で「重症者用病床」逼迫 大阪の医療関係者から悲鳴

 大阪府は24日、新型コロナウイルス対策本部会議を開き、繁華街を抱える大阪市北区と中央区の全域を対象とし、27日から一部飲食店に営業時間の短縮と休業を要請することを決めた。背景には、医療崩壊への強い懸念がある。重症病床の運用はベッドだけでなく専門スタッフを確保する必要があり、医療機関での拡充は難しく、時間との勝負を迫られている。

 「府の要請は妥当な判断だが、もう少し早く決めてほしかった」。りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)の倭(やまと)正也感染症センター長はこう指摘する。

 同医療センターでは全4床の重症病床が埋まり、中等症病床を転用している。「府内の重症病床が全て埋まることになれば、死亡率は一気に上がる。医療現場の状況は逼迫(ひっぱく)している」と危機感をあらわにする。

 切迫した事態は、同センターに限らない。府内の重症病床の確保数は206床とされ、24日の使用率は初めて50%に達した。ただ、206床の中には新型コロナ以外の重篤患者用のものも含まれており、実際に新型コロナ用に運用できる病床は130床で、これに基づく使用率は79・2%に上る。

 府病院協会の佐々木洋会長は「数字の上でベッドを確保しても、医師や看護師らの人手が追い付いていない。このまま感染者が増え続ければ医療崩壊の可能性も否定できない」と話す。

 府の試算によると、新規感染者が23日までの7日間平均348人を基準に前週比1・5倍のペースで増え続けた場合、12月2日には重症病床の最大確保数に対する使用率が70%を超え、自粛要請の基準「大阪モデル」で非常事態(赤信号)に移行。同9日には206床を上回るとされる。

 さらに冬場は脳梗塞や循環器不全といった重篤患者の増加が見込まれ、こうした新型コロナ以外の3次救急患者を治療するための病床確保も不可欠となる。

 吉村洋文知事は24日、記者団に「病床の積み上げより、(新型コロナの)重症者が増えるペースのほうが速い」と懸念を示した上で「特定の病院で一時的に救急搬送を停止し、病床の選別をしないといけない」と強調。各医療機関で病床の最適化を図っていく方針を改めて示した。

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