新時代のマネー戦略

FPが伝えたいNISAやiDeCoの落とし穴 「お得」で「便利」の裏返し (1/3ページ)

井上信一
井上信一

 みなさん、まだ少し先ですがバレンタインの前日、2月13日は何の日がご存知ですか?

 もう本稿のタイトルからしてバレバレですが、毎年2月13日は「ニーサの日」だそうです。若干厳しいゴロ合わせながらもこうしたPRなどが手伝ってか、また、毎年のように利便性向上のための制度改正もあいまってか、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)や、NISAとよく比較されるiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を利用される方が増えているようです。

 資産運用(投資)のツールとなる選択肢が多いに越したことはないですね。もちろん筆者も利用しています。でも、どの制度においても注意点はあるもの。できればもう一手の工夫をしておきたいところです。

NISAやiDeCo、なぜ「お得」なのか ポイントは税制にあり

 まずは両制度の簡単なおさらいをしましょう。どちらもWEB上で関連する記事がごまんとあるので、「何でお得なのか?」、そのポイントだけに絞ります。

 NISAとは、「少額投資非課税制度」の名にもあるとおり「売却時等の税制を不問にする制度」です。つまり投資で儲けが出ても税金がかかることは一切ありません。一般的な投資商品にかかる税率は儲け(運用益)に対して本則20%なので、これは大きなアドバンテージといえます。

 ただし、逆に損失が出ていても、一般の株式や投資信託に適用される税制のように「売却損を他の投資商品の売却益と相殺」したり「当年の売却損を翌年以降3年間繰り越して各年の投資の売却益と相殺」したりすることはできません。これが、「売却時等の税制を不問にする制度」といわれる所以です。

 このNISAで、長期・積立・分散投資による定期拠出を前提にしたものが「つみたてNISA」です。

 一方、iDeCoとは、公的年金に上乗せして加入者自身で資産を運用する「確定拠出年金制度」のうち「個人型」を指します。原則として企業が掛金を拠出してくれる「企業型」に対し、個人型は掛金を自分で負担します。

 厚生年金保険・国民年金保険などの「年金収入」やお勤めの方の「退職金に係る収入」については、給与収入や事業収入や投資の売却収入などと比べ、かかる税金が過大にならない課税面での配慮があります。NISAのように儲けが全て非課税になる訳ではありませんが、iDeCoを年金で受け取る場合は公的年金と同様の、一時金で受け取る場合は退職金と同様の税制が認められているのが特徴です。

 また、所得税や住民税は所得をもとに計算されますが、iDeCoにおける拠出額(つまり投資商品を購入するための投資金額)は、その全額が所得控除の対象となる点も大きなアドバンテージといえます。

 一般的な投資は、NISAも含めて、所得税や住民税が引かれた後の「税引き後収入(アフター・タックス)」の中から掛金を拠出します。それに対しiDeCoは、公的年金等の保険料と同じく、積立などの拠出に充てた金額が所得から差し引かれる(つまり所得税・住民税を安くできる)のです。その点でiDeCoは「税引き前収入(ビフォア・タックス)」に働きかけることができる運用手段といえます。

 このように、NISAもiDeCoも、税制において一定のお得感を得られる可能性のある点が、「利用できるのなら乗ってみる価値がある」根拠といえます。

あまり指摘されない、便利な制度ゆえの落とし穴

▼「投資信託」への過度な安心 タイミングが命取り

 NISAの種類としては、「NISA」と「つみたてNISA」がポピュラー(別途、未成年者対象のジュニアNISAもあり)ですが、前者の「NISA」で対象となる投資商品には「投資信託」以外に「個別株式」等も含まれるのに対し、後者の「つみたてNISA」で選択できるのは「投資信託」の一択となります。

 iDeCoについては元本確保型商品も選べますが、投資商品に関しては「つみたてNISA」と同様、ほぼほぼ「投資信託」から選ぶことになります。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus