コロナ その時、

(5)2020年4月1日~4月8日 緊急事態宣言、人影が消えた (1/2ページ)

 ついに緊急事態宣言、人影消え

 政府による緊急事態宣言の発令から一夜明けた2020年4月8日、首都圏の街頭に誰もが目を疑う光景が広がった。一度の青信号で数千人が行き交う東京・渋谷駅前のスクランブル交差点は人影がほぼ途絶え、周辺の商業施設は臨時休業した。電車やバスの車内はガラガラで、繁華街からネオンが消えた。

 「まさに瀬戸際が継続している」。安倍晋三首相は2日の衆院本会議でこう述べ、この時点ではなおも宣言発令に慎重だった。休業要請に従わず新型コロナウイルスの感染者を出した事業者が訴訟リスクを抱えたり、逆に宣言で過度な自粛を招いたりといった、社会や経済への影響を懸念したからだ。

 だが、政府の専門家会議は1日、5都府県で「医療崩壊」に陥る恐れがあると警告。厚生労働省は3日、軽症や無症状の感染者は自宅などでの療養を検討するよう都道府県などに通知した。感染者は増え続け、4日には世界で100万人を突破。国内では3000人を超えた。

 追い詰められたように政府はついに7日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、東京や大阪など7都府県を対象に、外出自粛などを求めて緊急事態宣言を発令した。

 「強制なき宣言」 迷う政府

 欧米中心に感染100万人/経済悪化「リーマン超え」

 多くの国民が、日増しに感染者が増える新型コロナウイルスへの恐怖と、迫りくる緊急事態宣言下での自粛生活への不安で押しつぶされそうになっていた。

 山梨県は1日、県内に住む0歳の女児が感染し重症であると発表。基礎疾患を持つ高齢の感染者が重篤化しやすいと考えられてきただけに、衝撃が広がった。一方で、ネットで感染者やその家族を誹謗(ひぼう)中傷するといったヒステリックな動きにまで発展しつつあった。

 プロ野球が3日、4月開幕を断念。Jリーグや大相撲も延期を決め、娯楽を奪われた国民のストレスはますます高まっていく。

 「元気だった?」。休校が続いていた首都圏の小中学校の多くで6日、始業式や入学式が行われた。生徒に笑顔がつかの間戻ったが、入学式は校庭で実施されたり来賓の歓迎が省略されたりした。入社式も中止やウェブ開催が相次ぎ、桜咲く新生活の光景は一変した。

 消費が落ち込む農林水産業を支えようと、「お肉券」や「おすし券」といった族議員の我田引水ととられかねない提案が浮上し、国民の政府不信は募っていく。1日に安倍晋三首相が表明した全世帯への布マスク2枚配布は「アベノマスク」と揶揄(やゆ)された。

 感染者急増に直面していた自治体は焦っていた。東京五輪延期が決まった東京都の小池百合子知事も、足かせが解かれたかのように活発に発言。5日には、「(緊急事態宣言発令の)決断がいつなのか待っている」と国を揺さぶった。

 首相はなおも宣言発令に慎重だった。迷いがあったという方が正確かもしれない。1日の参院決算委員会で「今この時点で出す状況にはない」と答弁した。2日の衆院本会議では「必要なら躊躇(ちゅうちょ)なく決断して実行する」とも述べたが、2日時点でも周囲に「(休業要請に従わない施設で)陽性になった人が訴えたら事業者は負けるのではないか」と懸念を示していた。

 日本はロックダウン(都市封鎖)を強制できる法的枠組みがないが、「緊急事態宣言=ロックダウン」との誤解がネットで広がったことも政府を困惑させた。

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