コロナ その時、

(6)2020年4月9日~4月13日 「貴族?、崩壊、天の声」 (1/2ページ)

 休業要請の対象、決まらない

 新型コロナウイルスの封じ込めへ緊急事態宣言が東京、大阪など7都府県で発令されたが、感染拡大は勢いを増していた。2日後の2020年4月9日に東京は感染者が新たに181人確認され、そのうち122人は感染経路が不明。大阪も92人と最多の感染者数を記録した。

 東京都は宣言前から、休業要請について百貨店や理髪店などを盛り込んだ対応案を策定していた。だが、国は慎重で宣言当日に改定した基本的対処方針では「国と協議の上、外出自粛の効果を見極めた上で行う」とし、百貨店、理美容は事業継続を求める業種に挙げていた。

 東京都の小池百合子知事が「(私が)社長だと思っていたら天の声がいろいろ聞こえてきて、中間管理職になったようだった」と述べるほど、休業要請の線引きをめぐる国との交渉は難航した。都がやっと休業要請対象を公表したのは宣言発令から3日後だった。

 感染者は10日に世界で150万人を超え、国内も5000人以上に達した。愛知、岐阜、三重の3県は10日、独自の“緊急事態宣言”を発令。感染拡大を抑えながら経済や国民生活をどう維持するのか。混乱の中で、緊急事態宣言は全国に拡大する流れとなっていった。

 「経済と人命」、国・都が衝突 宣言後初の週末ひっそり/在宅続きストレス募る

 ついに緊急事態宣言に踏み切った政府だが、直後に難題が待ち構えていた。理髪店や居酒屋をめぐって休業要請したい東京都と衝突する。「人命最優先」を掲げる自治体と、今後は経済的ダメージを抑えたい国の思惑がすれ違った。

 都庁内で「国と物別れでも改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき休業要請する」との強硬案も浮上したが、小池百合子都知事と西村康稔経済再生担当相が9日夜に会談、決裂は回避された。西村氏は翌日の会見で「時間をかけ突っ込んだ議論をした」と話し、都の“独走”を食い止めた安堵(あんど)感をにじませた。

 だが、この騒動で都のコールセンターには「うちは休業要請対象か」といった問い合わせが殺到。国と都との駆け引きで事業者や国民が振り回された。都は休業要請に協力する中小事業者に最大100万円支給する制度を導入したが、財政が厳しい他県ではなかなか思うにまかせず、自治体間で対応はばらついた。

 感染拡大抑制を図りながら、どう経済活動を維持するのか。ワクチンや治療薬もない中、新型コロナは人類史上最大級の経済的打撃を与える脅威との認識が広がっていた。「(1930年代の)世界恐慌以来、最悪の景気低迷に陥ると想定している」。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は9日の講演で、2020年の世界経済について警鐘を鳴らした。

 日本銀行は9日に公表した地域経済報告(さくらリポート)で、全9地域の景気判断を引き下げた。リーマン・ショック翌年の平成21(2009)年1月以来、11年3カ月ぶりのことだ。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は9日、「新型コロナ問題は戦後最大の人類の危機だ」とまで表現した。

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