新線探訪記

下手を打ったら”無用の長物“に? 横浜の知られざる新線「上瀬谷ライン」とは (2/3ページ)

「ゆりかもめ」を凌ぐ輸送力

 横浜市上瀬谷交通整備課の担当者は「事業化はまだ決定はしていませんが、花博開催前の開業を目指しています。花博の開催後に上瀬谷通信施設の跡地で土地区画整理事業も行います」と意気込む。花博後の「将来のまちづくり」に伴って見込まれる交通需要に応えるため、輸送力や定時性、安定性、建設費などを考慮した結果、新交通システムが選定されたという。

 新交通システムは日本独自の呼称で明確な定義はないが、上瀬谷ライン(仮称)で採用されるのは「自動案内軌条式旅客輸送システム」(AGT)。「新交通システム」と聞いて多くの人が思い浮かべるであろう「ゆりかもめ」(東京)や「ポートライナー」(神戸市)と同じ方式である。ゴムタイヤの車輪を備えた自動運転の列車が専用軌道を走るAGTは、騒音や振動が少なく、鉄のレールの上を鉄の車輪で走る従来の鉄道と比べ、急勾配や急カーブの路線でも走行できるというメリットがあるとされる。

 計画では瀬谷駅(仮称)から幹線道路の環状4号線に沿ってしばらく地下を走行し、施設跡地で地上に出る予定で、総延長は約2.6キロ。終点の上瀬谷駅(仮称)は環状4号線付近にできるとみられる。地元の男性(75)が「海軍道路」と呼んでいた道路だ。その名の通り、かつては軍用道路だった。滑走路として使うことも想定していたのか、約3キロにわたって直線の道路が続く。

 今は人気もまばらな上瀬谷駅(仮称)周辺も、2027年には花博の玄関口として多くの人でにぎわうのだろう。上瀬谷ライン(仮称)の運行計画を見て驚いた。運転本数は朝ラッシュ時に1時間当たり最大36本(上下線)。これは東京の都心臨海部を走る「ゆりかもめ」に並ぶ高頻度運転だ。しかも、ゆりかもめが6両編成なのに対し、上瀬谷ライン(仮称)は最大8両編成。車両の全長はいずれも同じなので、ゆりかもめをも凌(しの)ぐ輸送力を誇る。

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