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「幸福度のピークは年収660万円」脳科学者が語る3000万稼いでも幸せになれない深い理由 (2/2ページ)

 他人と比較して「人生に満足」しても「幸せ」ではない

 「満足・評価」とは、人より高いゴールを達成したか、他人と比べてどうなのか、といった比較の影響を受けるものです。つまり他人と比較して満足するには、より多くの所得が必要であると考えられています。

 また、人生に対する評価は、年収だけでなく学歴も強く相関することや、学歴によって、満足する年収が異なってくることが他の研究からも示されています。

 何れにせよ、年収が増えるにつれて自分の人生を高く評価する度合いは高まるにも関わらず、日々感じる幸福感はある年収額を超えると高まってはいかない、つまり、お金で買える幸せは限られているのです。

 目標達成による自己実現で長期に幸せになる

 心理学や経済学においては、金・物・地位を目指す幸せは、ヘドニック・トレッドミル現象と呼ばれ、一時的な幸福には繋がるものの、慣れてしまうことで、その効果は時間とともに薄れていってしまうことも言われています。

 では、お金を超えた何が幸せの持続に繋がるのでしょうか?

 非地位財という、「他人と比較しない財」を得ることが幸せにつながります。その一つとして、自分自身の成長や進歩のため、自身の所属する会社や組織のため、などとして立てた目標に対し、努力をし、その目標を達成することが挙げられます。目標達成により得られる自己効力感や自己肯定感は、長期的幸福に繋がることが明らかになっています。また、目標達成有無にかかわらず、努力をした過程そのものが幸福に繋がるという報告もあります。

 脳をトレーニングする

 持続的に幸せだと感じることと、非地位財に関するポジティブな出来事に直面した時に発生する一時的な幸福はお互いを強化しあう関係があります。実はこの、長期的と一時的、両方の幸福には、脳の中で共通の場所(吻側前部帯状回)が関連しており、長期的な幸福は吻側前部帯状回の体積に関係して、一時的な幸福は神経活動に関係していることがわかりました。

 最近の研究で、脳は筋肉と同じように、鍛えれば鍛えるほど特定の脳領域の体積が大きくなることが分かっているので、楽しい過去の記憶の想起や、明るい未来を想像するといったトレーニングにより、持続的な幸福が増強する可能性もありそうです。

 <参考文献>

 ・Jebb, A.T., Tay, L., Diener, E. et al. Happiness, income satiation and turning points around the world. Nat Hum Behav 2, 33-38 (2018).

 ・Kahneman D, Deaton A. High income improves evaluation of life but not emotional well-being. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Sep 21;107(38):16489-93. doi: 10.1073/pnas.1011492107. Epub 2010 Sep 7. PMID: 20823223; PMCID: PMC2944762.

 ・https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report04.pdf

 ・Janina Larissa B?hler, Rebekka Weidmann, Jana Nikitin, Alexander Grob. A Closer Look at Life Goals Across Adulthood: Applying a Developmental Perspective to Content, Dynamics, and Outcomes of Goal Importance and Goal Attainability. European Journal of Personality, 2019; DOI: 10.1002/per.2194

 ・Matsunaga M, Kawamichi H, Koike T, Yoshihara K, Yoshida Y, Takahashi HK, Nakagawa E, Sadato N. Structural and functional associations of the rostral anterior cingulate cortex with subjective happiness. Neuroimage. 2016 Jul 1;134:132-141. doi: 10.1016/j.neuroimage.2016.04.020. Epub 2016 Apr 13. PMID: 27085503.

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 細田 千尋(ほそだ・ちひろ)

 博士(医学)

 東京大学大学院総合文化研究科研究員/科学技術振興機構さきがけ研究員/帝京大学医学部生理学講座助教。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学卒業後、英語学習による脳の可塑性研究を実施し、研究成果が多数のメディアに紹介。その研究をきっかけに、「目標達成できる人か?」を脳構造から判別するAIを作成し特許取得。現在は、プログラミング能力獲得と脳の関連性、 Virtual Realityを利用した学習法、恋愛と脳についても研究をしている。

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 (博士(医学) 細田 千尋)(PRESIDENT Online)

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