快感を覚えるエキゾーストサウンド
さて、そのM440iの走り味は軽快である。そして力強い。おそらく2021年の初春に日本投入となるM4はこのM440iを遥かに凌(しの)ぐパフォーマンスを披露するに違いないが、M440iは力強さに加え紳士的な振る舞いが備わっている。
搭載するパワーユニットは直列6気筒3リッター、シングルターボチャージャーが組み合わされる。最高出力は387ps、最大トルクは500Nmに達するというから、加速力は凄まじい。
絹のように滑らかに回る直列6気筒であることからシルキー6と呼ばれるそれは、全回転域で淀みなくトルクが溢(あふ)れ出す。エキゾーストが迫力のある音量を響かせるものの、密度の濃いシリンダの爆発が伝えるバイブレーションやサウンドは快感ですらある。そのエンジンを味わうだけでも価値があると思える。
もちろんコーナリング姿勢は爽快で鋭い。だが、その伝統的な縦長キドニーが主張するように、新鮮な空気を腹いっぱいに吸い込んで、500Nmという強力なパワーを見舞う瞬間こそ、M440iが光り輝く瞬間のように思えた。
これからしばらく、縦長キドニーグリルの時代が続きそうである。そしてそのイメージリーダーとして4シリーズがBMWを牽引する。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。